英会話のトレーニングにもコーチが必要
【三宅】それは単に場数を踏むという話ではなく……。
【西内】場数を踏んでメンタルを鍛えることも大事ですが、やはりいいフィードバックがあってこその練習だと思います。たとえばコーチにつかずにバットの素振りを毎日行った結果、変なフォームで固まってしまったら本番で打てるはずがありません。一方で定期的にフォームをチェックしてくれて、的確なアドバイスをもらいながら練習することができれば、非常に効率よく上達します。
そういう意味では大人が英会話レッスンを受ける価値は、いいフィードバックをもらいながら練習できることですよね。「仕事で英語を使っているからレッスンなんていらない」という人もいますが、リアルな会話のなかで「そこはこういう表現のほうがいいよ」というようなフィードバックをくれる人はまずいませんから。
ネーティブのお手本で正しい発音が身に付かない理由
【三宅】たしかにいいフィードバックを得ながら練習するのか、むやみに時間だけかけてやるのかでは学習効果がまったく違いますよね。私もピアノのレッスンを受けているのですが、ちょっとしたアドバイスをプロの先生からもらうだけですぐに直ります。
【西内】そうですよね。だからフィードバックといっても単なるダメ出しではなくて、表出している課題の本質的な原因や、なぜこうすべきなのかという理屈とかをズバリ教えてもらえると素直に受け止めやすいのですよね。
ピアノも一緒だと思うのですが、僕が学生時代にバンドでベースを弾いていたとき、なかなか指が滑らかに動いてくれず、壁に直面していたのです。でも良い師匠と巡り会えて「指を動かす筋肉は前腕にあるのだから、前腕に意識を向けて、できるだけシンプルに一種類の筋肉だけでコントロールしたらいいよ」と教えていただいたところ、指が急にスムーズに素早く動くようになりました。
だから英語の発音についても、ネーティブの人が「こういう感じだから」といくらお手本を見せてくれてもいまいちピンとこない人が多いのは、先生が体の構造的な話をあまりしてくれないからかもしれません。日本語だと唇の先端を動かすだけで発音できてしまいますからね。