外国人から英語で話しかけられたとき、気の利いたフレーズで応じるにはどうすればいいのか。統計家の西内啓氏は「特定の人と親睦を深めるなど目的が明確なときは、自分用の台本を書くのが一番効率的だ」という。イーオンの三宅義和社長が、そのわけを聞いた――。(第2回)
統計家でデータビークルCPO(製品責任者)の西内啓氏

ディナー会場で隣に「マーケティングの神様」が

【三宅義和氏(イーオン社長)】最近でも日常的に英語を学ばれていますか?

【西内啓(データビークルCPO)】いまは必要に応じてですね。当社ではデータ分析のソフトウエアを開発していて、業界で少し注目が集まり、アメリカのITに関する大手調査会社に興味を持っていただいています。最初は日本支社の方からアプローチをいただいたのですが、「これは世界にないすばらしい製品だから、すぐアメリカの本社チームに説明してください!」と言われまして、いまはそのプレゼンのために頑張って英語を練習し直しています。

【三宅】それは成功させないといけませんね。

【西内】学生時代のように「多少、伝わらなくても大丈夫」というお気楽な状況ではなく、会社の命運がかかっていますからね。グローバルに製品を展開する未曽有のチャンスなので、「なんかさっきの日本人の説明よくわからなかったね。まあいいか」では済まないんです(笑)。

【三宅】仕事で英語が求められる状況に追い込まれると伸びますよね。

【西内】おっしゃる通りですね。僕の場合、英語がある程度できるようになってから現在までに、猛烈に英語を勉強し直した時期が二度あります。

一回目は京都大学の大学院で授業を受け持ったときで、「はい、よろこんで」と即応したら、後日「留学生が多いので英語でお願いします」と言われて。これはマズイと思って必死に勉強しました。

次に勉強したのが、ソーシャル・マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーさんとお話しする機会をいただいたときです。もともとの出会いは留学中で、コトラーさんも登壇されていたフロリダのある学会に参加したのです。かなり小規模な会で、アクセスの悪さもあって日本人は僕と友人一人だけ。完全にアウェーでしたが逆に日本人が来たことを珍しがられて、ディナー会場に行ったら「せっかくなのでここに座れば」と言われて座ったのがコトラーさんの隣だったのです。僕にとっては雲の上の人です。

【三宅】それは緊張しますね。

日本史は世界との懸け橋になる

【西内】はい。緊張はしたのですが、そのときはたまたま話題に助けられました。彼は日本の「根付(江戸時代に使われていた留め具)」が好きでその話を振られたのですが、普通の若い日本人だと焦りますよね。「根付? 何それ?」って。でも、たまたま僕は『ギャラリーフェイク』という漫画で根付のことを知っていて、自宅の近くに根付のギャラリーがあったので遊びに行ったことがあったのです。

【三宅】おー、それは良かったですね。

【西内】奇跡です(笑)。だからその晩はその話で盛り上がり、別れ際に「次は根付をお土産に持っていくけれど遊びに行っていいですか」と聞いたら、「もちろんだよ」のような感じになりました。その後、帰国して日立さんが主催されたフォーラムで登壇する機会をいただいたときにコトラーさんも招待されていることがわかり、超過密スケジュールのなか10分だけお会いさせていただく時間をもらえたのです。絶対によどみなくしゃべろうと思ったので、このときも勉強し直してから参加しました。