世界的に人気の片付けコンサルタント“こんまり”こと近藤麻理恵さん。「ときめくモノ以外を処分する片付け法」はアメリカで大ブームになっている。このブームはいつまで続くのか。ニューヨーク在住ジャーナリストの肥田美佐子氏が、米国文化の専門家に聞いた――。
写真=Everett Collection/アフロ

「消費大国」アメリカに倹約文化は根づくのか

今年始め、ネットフリックスで配信されるやいなや米国で大ヒットしたリアリティーショー「KonMari 人生がときめく片づけの魔法」。世界的に知られる片付けコンサルタント、近藤麻理恵さん(34)が米国の家庭を回り、住人と一緒に衣類や本を処分したり、小さなスペースに収納したりしながら、魔法のように片付けていく番組だ。

心が「ときめく」モノは残し、それ以外は思い切って捨てるという日本的なスピルチュアリティー(精神性)が米国人の琴線に触れ、古着などを寄付する人が急増。売り物にならないガラクタを含め、あふれ返る中古品に悲鳴を上げるリサイクルショップもあるという。「こんまりエフェクト(効果)」恐るべし、といったところだ。

世界最大の「消費大国」アメリカも、ついに倹約文化に目覚めたと言いたいところだが、こうした現象を懐疑的にとらえる声もある。その一人が、米南部ノースカロライナ大学ウィルミントン校の歴史学者で、米国の物質文化と服装が資本主義の歴史とどうかかわってきたかを研究するジェニファー・ル・ゾッテ助教だ。

ネットフリックスの片付け番組は本質的ではない

彼女によると、まず、前出の番組は、2014年に英語版が刊行された近藤さんの大ベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』とかけ離れているという。番組づくりが表面的で、米国人視聴者が「こんまりメソッド」を一つひとつ取り入れるところまではいかないというのが、ル・ゾッテ氏の分析だ。

実用性に富む同書には、米国人が空間や家と「個人的な関係」を育み、大量消費文化の弊害に気づきうるだけの素材が詰まっているが、リアリティー番組にはそれが欠けているという。

次に、『From Goodwill to Grunge:A History of Secondhand Styles and Alternative Economies』(『善意からガラクタまで 古着スタイルとオルタナティブ(代替)経済の歴史』未邦訳)の著者でもある同氏は、「ときめき」を感じないモノをリサイクルショップに寄付する人が急増している点に言及。歴史的に、米国ではリサイクルショップへの寄付が増えた後、ほどなくして消費も増えるというリバウンド現象が繰り返されてきた点を指摘する。