大量消費主義への反発に根差したムーブメント

目先の流行を取り入れた廉価品を大量生産する「ファストファッション」系ブランドに対し、高品質な服を1着買って長く着続けるという「スローファッション」ムーブメントが起こったのも、その一例だ。服を買うという行為よりも、「質」や「階級」を重視するトレンドである。

また、「タイニーハウス・ムーブメント」も、大量消費主義への反発に根差したものだ。「スモールハウス・ムーブメント」とも呼ばれる、このトレンドは2000年ごろから本格化したと言われ、小さな家で、環境にも優しいシンプルライフを送ろうという社会運動だ。14年には、自然の中で小型住宅などに住む人々を取り上げるリアリティー番組が放映され、15年には米非営利団体「アメリカン・タイニーハウス協会」も誕生したが、マイナーなブームの域を出ていない。

興味深いのは、このタイニーハウス・ムーブメントも大いに商業化されたものだという批判があることだ。流行の最先端をいくファッショナブルな輸送コンテナ式マンションやトレイラー式特注住宅など、「デザイナー・ミニマリズム」と揶揄される高価な小型住宅もある。こうしたムーブメントでさえ、「『反消費型消費主義』とでも言うべき、新種の消費主義と化すリスクがある」と、ル・ゾッテ氏は分析する。

売上点数が増えても消費支出は減ったアパレル市場

一見、ファッション業界の足を引っ張るかのように見えるリサイクルショップも、実は同業界にとってプラスになるという見方もある。手持ちの服を寄付することで、「新品を買ってもいいのだ」と、自分を納得させられるからだ。実際にはリサイクルショップが飽和状態と化し、古着や中古品が処分されるなど、もはや本来の使命を果たしていないとしても、消費者は不要なモノを「寄付」することで、新たな消費を正当化できる。

リーマンショックに続く大不況や格差拡大で低中所得層の生活は厳しくなっているが、会計・コンサルティング大手デロイトの5月29日付報告書によると、米国人が2017年に食品やアルコール、家具、外食、住宅、エンターテインメントなどに費やした金額が収入に占める割合は1987年とほぼ同じだったという。

一方、収入に占める消費支出の割合が30年間で大幅に下がった例外的カテゴリーが1つある。アパレル(衣類)だ。1987年には5%だったが、2017年には2%と、半分以下に落ち込んでいる。だが、全体の売上点数はむしろ増えているため、安く衣類を買えるようになったことが理由だという。アパレル市場の競争激化により、衣類の価格にデフレ圧力がかかり、1点1点の売り上げに大幅な下落傾向が見られるという「市場原理」が原因だと、同報告書は分析している。

米アパレルチェーンの中には、破格の安さと品ぞろえの豊富さで業界を「破壊」するEコマース企業に苦戦を強いられ、ニューヨーク・マンハッタンの中心部でも、金融危機後の大不況をほうふつさせるような大幅値下げで対抗する店もある。低価格化は、さらなる消費意欲につながりやすい。