かんばんの動きを見れば、現場の状況がわかる。だからトヨタは、ムダのない作業を実現できる。その統制された動きを支えているのは、「改善後は改善前」という精神であった。

「改善後は改善前」その言葉の本質

現在、TPS本部長になっている饗庭龍次はトヨタ生産方式と自主研(自主研究会)の実施について、友山茂樹から言われたことをよく覚えている。

「いいか。TPSを前にして役職とか組織とか肩書は関係ない。創業者、創業家の分身のつもりでやれ。現場へ行って自主研を始めろ。意見を出して叩きあうんだ」

鈴村喜久男が始めた「叩きあい」とは、カイゼンを止めないことだ。トヨタには「改善後は改善前」という言葉がある。自主研の発表会に出た指導者、もしくは組織長が最後に挨拶する。その時には必ずと言っていいほど、この言葉から始める。わたしもこの言葉を現場で何度も聞いた。トヨタでは挨拶と言えば、このフレーズが必ず出てくる。

「参加者のみなさん、半年間、ご苦労様でした。みなさんの努力には頭が下がります。しかし、みなさん、TPSに終わりはありません。『改善後は改善前』という言葉があります。明日から、いや、今日、これから職場に戻った瞬間から、カイゼン箇所を考えて、実行に移してください」

では、自主研を行った会社、参加者はどう変わるのだろうか。

自主研の結果、TPSが定着し、浸透すると、人は変わる。体験した人に聞くと、一様に「毎日、考えて仕事にとりかかるようになった」と語った。

会社に行くと、お茶やコーヒーを飲んで、メール連絡をする。それから会議、打ち合わせ、現場がある人はラインに就いたり、営業のために外に出かけていく。だが、自主研では「考えること」を学ぶ。それまで当たり前と思っていた仕事を疑うということが始まる。人によっては通勤のルートを「もう少し短縮できないか」と考えるようになる。

トヨタ生産方式が体に入ると、考え続けるようになる。

わたしはその現場を自分の目で見た。2025年の秋、トヨテツの現場で考え続ける人たちに出会った。トヨテツとは部品メーカー、豊田鉄工の愛称だ。彼らは鋼板・樹脂の自動車プレス部品を作っている。トヨタから見るとティア1(1次サプライヤー)の仕入れ先である。

通常、メーカーは部品を納入してくる会社をサプライヤーと呼ぶ。かつては下請けと呼んだが、今は一部メディア以外は「下請け」「下請け会社」という言葉は使わない。