余計な人員は絶対に雇ってはいけない

私は広告代理店を辞めて、しばらく無職として過ごしたあと、ライターの仕事を始めた。そして程なく、雑誌『テレビブロス』のフリーランス編集者になったのだが、1ページ5万円の予算で、すべてをつくらなければならなかった。

だから大抵の場合は、自分で執筆・撮影・編集といったすべての制作業務を担当するようになった。だが、芸能人に登場してもらう場合には写真のクオリティがやはり求められるので、やむなくカメラマンを雇い、どうしても業務が立て込んで忙しい場合には「チクショー!」と思いつつも自分の実入りが減ることを受け入れて、他のフリーライターに取材や執筆を依頼した。

とはいうものの、原則的には特集の4ページや6ページ程度であれば、自分一人でつくってしまうことを心掛けていた。何しろ、自分の取り分が減るのがイヤだったからである。

仮に、取材に5人のライターがやってきたらどうなっただろうか……。まさに広告業界の「ただいるだけの人」と同様のことが起きたに違いない。「その場にいた」ということに対して1万円ずつ払ったとしよう。となれば、予算が限られているだけに赤字に陥る。

だからこそ「余計な人員は絶対に雇ってはいけない。多少自分の負担が増えたとしても、安易に他の人に声をかけてはいけない」というスタンスが私には染みついている。

業務においては常に個人行動

こうした個人事業主の暮らしを9年ほど送った後、自分が社長を務める会社を立ち上げた。従業員は、大学の同級生であるY嬢の一人のみ。たった2人しかいない小さな会社だが、それだけに明確に決めていることがある。それは、業務において常に「個人行動」を心掛けることだ。関連して、2人で会議などに参加することも基本的にはしないことにしている。

業務上、どうしても2人そろう必要がある場面を除いて、わが社はいつも個人プレイである。2人が必要な場面とは、あくまでも役割分担をせざるを得ないケースである。