著名人が会見に出ても、拡散効果は大して期待できない

それこそ、元野球選手が登場するような会見の場合、「大谷翔平選手がケガから復帰後、大活躍中ですが、大谷選手の今後の活躍についてご意見を」などと尋ねてコメントを引き出せば、「『大谷は三冠王も狙える!』野球評論家・○○氏太鼓判」といった記事をつくることが可能になる。

とはいえ率直に述べてしまうと、私は著名人がこうした会見に出ることに、あまり意味がないと思っている。あくまでも、その人のファンが多少は騒いでくれて、翌日のスポーツ紙やテレビのワイドショーで取り上げられる程度の効果しかないのでは。

大量発生する“壁際のスーツ男”とは

だが、もっと不毛なのが、こうした会見に立ち会うサラリーマンの皆様である。もちろん、会見の主催者たる企業、現場を回す広告代理店の責任者とイベント会社のスタッフ、そして記者やカメラマンといった取材陣はその場に不可欠な存在だ。しかし、会見の場に居合わせる人々の多くは、実のところ特にやることのない広告関係者なのである。

こうした現場ではよく、異様な光景を目撃する。それは「壁際に立ち並ぶ大量のスーツ男たち」だ。彼らは広告関係者──具体的にいうと、記者会見を主催するクライアント企業と広告施策で付き合いがある広告代理店各社の営業担当者、そしてそのクライアント企業から広告を出稿してもらえる可能性があるメディア(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・ネットメディア)の営業担当者である。ときには広告関係者のほうが取材陣よりも人数が多いなんてことすらある。

彼らは“広告関連の仕事をくださる大事なクライアント様”のために、忠誠心を見せるべく、会見の場に大挙して押し掛けてくる。大事なのは、クライアント様のキーマンたる部長や役員とその場で挨拶をすることなのだ。「おぉ、忙しい時間を割いてわざわざ来てくれたんだね、アナタ」なんて思ってもらえることを期待しているのである。さすがに記者用の椅子に座るわけにもいかないので、壁際で遠慮がちに突っ立っているのだ。