これから日本では業界ごと消滅するような大変化がやってくる。元マイクロソフト社長で、HONZ代表の成毛眞氏は「なかでもいち早く衰退しつつあるのがメディア業だ。今回、50歳前後で転職などの『決断』を下した4人と対談したが、そこから学べることは多い」という――。

※本稿は、成毛眞『決断』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

メディア業界が置かれている状況は「対岸の火事」ではない

書評サイト「HONZ」代表の成毛眞氏(撮影=中央公論新社写真部)

決断』というタイトルを冠した、転職などに伴うミドルエイジの「決断」について考えた新書を刊行した。この本で著者と対談していただいた4人は、50歳前後という共通の属性はあるものの、進んできた道も、「決断」した道もバラバラ。各人の「決断」の理由もさまざまだ。

ただし、「メディア」と呼ばれる産業・業界に属する人物であることは共通しており、老舗の大手出版社からベンチャー企業に身を投じた人もいれば、大手新聞社から独立した人、アカデミズムの世界に持ち場を変えた人もいる。会社に残り、着実に出世の階段を上っている人もいる。

近年の新聞や出版などの悲惨な状況は、ここでわざわざ論じる必要もないだろう。だからこそメディア業界は目まぐるしく変化を遂げており、それに伴い、転職市場も活発化している、というのがその背景でもある。

さて、「メディアの話なんて関係ない」と、ここで記事を閉じそうになっている人もいるかもしれないが、少し待ってほしい。

同書もこの記事も、メディア業界の現状を憂うものでも、そのあり方を論じるものでもない。あくまで40代、50代のミドルエイジが直面する、キャリアにおける「決断」について考える本である。実際今、新聞や出版が置かれている「未曾有の状況」とは、あなたが身を置く産業にとっても決して「対岸の火事」ではないのである。

一つの産業「丸ごと」での激変が起こる

端的に言って、これから先は一つひとつの会社が変わる、というレベルにとどまることなく、一つの産業“丸ごと”での激変がしばしば起こることになるというのが私の見立てだ。ある日、一つの業種が丸々この世から消えてしまう、という事態を目にすることが日増しに増えていくことだろう。

その意味で、たまたまメディア業界が早々と“凋落”しただけなのであり、これからの社会では、現在起きているあの業界の激変は、多くの人にとって「明日は我が身」となるはずである。特に日本全体で、ものすごいスピードで進む少子高齢化と、産業構造の大変革で、この先、あらゆる産業において、身の振り方を考えなければならない人が続出するだろう。

はっきりいえば、もはや「対岸」など存在しない。そして、もしあなたが身の振り方を考えなければならなくなった場合、いち早く衰退しつつあるメディア業で「決断」した人たちが選んだ生き方は、業界は違えども、大いに参考となるはず。だからこそ、今、このタイミングで、このテーマで執筆したのである。