地方銀行は「潰れない」就職先ではなくなった
いかに「安心できる対岸が存在しないか」という話題を論じる時、「潰れない」とされた業界の衰退について記すとわかりやすいかもしれない。
ほんの20年ほど前まで、上京した大学生が地方に戻り、Uターン就職する際に人気だったのが「県庁」と「銀行」だった。それは、いずれも「潰れない」と信じられていたからだろう。
しかしその状況は大きく変わった。自治体を取り巻く環境については先ほど触れたが、銀行、特に地方銀行はすでに存続自体が危ぶまれている。
金融庁は2018年に衝撃的な報告書を出した。東北や四国など23県の地銀について、地域で独占的な存在になろうとも、不採算構造は変わらないと指摘したのだ。つまり、店舗や人員を減らそうが時間稼ぎに過ぎない、ビジネスモデルそのものが立ち行かなくなっている、というわけだ。金融庁は銀行の監督官庁である。いわばプロのスポーツチームの監督がその選手へ「そろそろ引退だな」とクビを宣告したに等しい。
銀行の本業とは、預金を貸し出しに回して得る、利ざやをいかに稼ぐかにある。しかし、カネ余りの低金利時代が続き、利ざやは自然に低下してきた。また「フィンテック」と呼ばれる金融業の技術の刷新で、周辺のビジネスも大きく変化を遂げつつある。
「何もしない」から地銀は生き残っていた
ここまで地銀が長らえてきたのは「巣ごもり」を続けてきたからだ。バブルの不良債権処理に苦しんだ各行がそれでも存続できたのは、リスクをとらず、コストを抑えていたからに過ぎない。つまり「何もしない」という消極的なスタンスで生き残ってきたのだ。
20年間も巣ごもりを続けていれば、スキルも当然さび付く。融資の目利きやリスクマネーの供給などもできるわけがない。経費を徹底的に削減するにしても、限界がある。『日本経済新聞』の報道では、全国106行の地方銀行の半分にあたる54行が本業で赤字に陥り、うち23行は5期以上連続で赤字という(「地銀、半数が本業赤字」2019年3月15日記事)。
地方経済を担う地銀は、今現在で約100、信用金庫・信用組合に至っては約400もある。どう考えても過剰だ。経営統合で規模のメリットを追求し、合理化を模索するくらいしかないといわれているが、それもまた時間稼ぎに過ぎないだろう。