「働かないおじさん」は、なぜ会社に居続けるのか、しかもなぜ自分より給料が高いのか。イライラしたことはないでしょうか。どこにでもある「働かないおじさん問題」に、人材開発の専門家がスバリお答えします。

単純に生産性が落ちていくという問題

あなたの会社にも、働いていないように見える、あるいは実際に働きの悪いおじさん社員がいるのではないでしょうか。「よく会社にいられるものだ」と嫌味の一つも言いたくなります。

なぜ、働かないおじさんは働かないのか。そこにはいくつかの理由があるでしょう。まず単純に、加齢とともに仕事の生産性が悪くなることが挙げられます。記憶力や体力などは加齢とともに下がります。

仮に人の能力のピークを45歳とすると、そこから先は生産性が落ちていくので、働きが悪くなるのは当然です。それにもかかわらず、多くの日本企業が終身雇用制度をとっていて、賃金は年齢とともに上がっていきます。45歳以降では歳をとるほど、生産性カーブと賃金カーブのギャップが広がり、賃金の過剰支払いの状態が顕著になります(図表1)。そのため、「これだけ収入があるのに、これしか働いていない」感が強くなるのです。おじさん側にしてみれば、働いても働かなくても同じ給料をもらえるなら、働かない方が得ということになります。

十分な働きができない「学ばないおじさん」

それから、市場の変化や技術の変化が速いので、それについていけなくて十分な働きができないという理由も大きいでしょう。長い間、新しいことを学び直してこなかったため、変化に置いていかれた状態です。

しかし若い頃からずっと靴底をすり減らして営業してきたおじさんが、今になってソリューションマーケティングとかSNSマーケティングと言われても何が何だかわかりません。働きたくても働けないのです。新しい学びがなければ、過去の成功体験や勝ちパターンから抜け出ることはできず、今の時代では成果を出せません。学びから遠ざかったおじさんは、働きたくても、スキルがないのです。

おじさんたちの場合、18歳の大学受験のときが学びのピークになってしまい、その後はあまり学んでいないケースが多いと思います。日本の場合は、年齢を重ねてから大学や大学院で学び直すケースはレアケースです。それが海外ですと、大学や大学院は、様々な年齢層の人々が集います。こうした教育機関のあり方を見直す必要があります。