※本稿は、堀田秀吾『最新研究でわかった“他人の目”を気にせず動ける人の考え方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
「そこにスマホがあるだけで」生産性が下がる
忙しい私たちの脳は、常に「マルチタスク」を強いられています。
仕事に集中しようと思うとメールやメッセージが飛び込んできたり、プライベートの時間にも、仕事の連絡が入ってきたりします。
特にスマホの存在は、私たちの脳にかなりの負担をかけています。
目の前で仕事が山積みになっていて、やらないといけないことは分かっているのに、ついダラダラとSNSを眺めたりゲームをしてしまう。メールやメッセージのやりとりも際限がない。
誰しも、心当たりがあるのではないでしょうか。
スマホゲームで息抜きするぐらいいいじゃないか、という声が聞こえてきそうですね。でも、そこにあるスマホを気にするだけで、私たちのパフォーマンスは確実に低下しているのです。
テキサス大学オースティン校のウォードらは、何かに集中したり、意思決定をしたりする際に、スマホがそばにあるだけで注意力が散漫になることを実証しています(*1)。
ベストは、隣の部屋に置いてしまうこと。スマホが全く手にとれない、見えない環境に置いておくのが良いということです。
また、バージニア工科大学のミスラらが行った、約100組のカップルを対象にした研究によると、テーブル上に1台のスマホがあるだけで、あるいは一方がスマホを触っているだけで、カップルのお互いに対する親近感や共感は低下するそうです(*2)。
片付いた部屋と散らかった部屋、どちらが創造性が高まるか
気になる存在はスマホだけではありません。
部屋やデスクが散らかっていると気になって勉強や仕事に集中できない、とする研究もあります。
一方、「創造性を発揮するには散らかった部屋の方がいい」という報告があります。ヴォーズの研究では、48名の被験者を2つの部屋に分けました(*3)。
B)書類が机の上や床に散乱している「散らかった部屋」
そして、ピンポン玉の製造会社のためにピンポン玉の新しい使い方を考えるという、創造性が問われる課題を与えました。
すると、散らかった部屋の被験者の方が創造性が高くなったのです。整頓された環境にいる人は伝統や慣習にならいがちで勉強や作業に集中できる一方、散らかった環境にいる人は伝統や慣習から解き放たれるとしています。
私の大学院の指導教授は、20代半ばで世界的に名を知らしめた天才なのですが、彼のデスクも書類が山になっていました。日常的なデスクワークと、天才的なひらめきが必要とされるクリエイティブワークでは、ふさわしい環境が違うということのようです。
(*1)Ward, A. F., Duke, K., Gneezy, A., & Bos, M. W. (2017) . Brain Drain: The Mere Presence of One’s Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. Journal of the Association for Consumer Research, 2 (2) , 140-154.
(*2)Misra, S., Cheng, L., Genevie, J., & Yuan, M. (2014) . The iPhone Effect: The Quality of In-Person Social Interactions in the Presence of Mobile Devices. Environment and Behavior, 48, 275-298.
(*3)Vohs, K. D., Redden, J. P., & Rahinel, R. (2013) . Physical order produces healthy choices, generosity, and conventionality, whereas disorder produces creativity. Psychological Science. 24 (9) , 1860-1867.