仕事と家事の負担がのしかかってしんどい、という共働き世代の女性は多い。解決のために、男性が家事を分担するのとあわせて、女性もやるべきことがありました。立命館大学教授で家族社会学を専門とする筒井淳也先生は「男性も女性もグローバルの家事基準を知って“丁寧な暮らし幻想”を捨てるべき」といいます。

男性が求める家事基準が高すぎる

最近、日本人は家事を丁寧にやりすぎているという指摘が増えてきましたが、手をゆるめるという方向にはなかなか進まないようです。共働き世代のしんどさは、そんなところからもきます。

現在働き盛りの30代~40代の男女は、共働きが当たり前となりつつある転換期の世代。ただ、1990年代半ばまで、日本では専業主婦家庭が多数派でした(図表1)。ですから、自分の母親は専業主婦だったという人が多く、スキルの高い家事をこなす母親を見て育ってきています。夕食におかずが何品も並ぶのはもちろん、ちゃんと後片付けをして、毎日、台所のシンクまで磨く。夫がそんな母親のスキルの高い家事を基準として共働きの妻にも求めるので、妻が簡単な朝食をつくってくれても、自分の母親と比較して、妻はそれほど家事をしていないと感じてしまう。

「稼いでいるから家事免除」の論理

「俺のほうがお金を稼いでいるのだから、家事を要求して当然」という態度に出る男性はもっとやっかいです。たとえ、妻も同じぐらいの時間働いていても、自分のほうが稼いでいるから家事は免除されるという理屈が男にはあるんでしょう。ただ、家事分担についての実証研究では、収入のある妻のほうが家事をしないというはっきりとした結果はでていません。夫が家計のすべてを負担している状態から、稼ぎの額が夫婦同じ状態まで妻が稼ぐようになっても、平均的には夫婦間の分担はあまり変わらないのです。

ちなみに、「時間に余裕があるほうが家事を負担する」ということでもありません。正規雇用者の平日出勤日の家事時間を比較したデータがあるのですが、日本では女性が男性の6倍も家事をしています(図表2)。つまり、時間に余裕があっても、妻が稼いでいても男は家事をしないという圧倒的な不公平が日本には存在しているのです。

しかし「どれだけ稼いでいればどれだけ家事が免除されるか」ということを口論しても、水掛け論になって虚しいだけです。夫に自分の大変さをうまく伝えるくらいしかできることはないかもしれません。