働く女性にとって、家事・育児の分担は大きな課題。ところが現状では共働き家庭の女性の分担比率は8割を超えています。拓殖大学准教授の佐藤一磨さんは「統計的なシミュレーションで働く妻の幸福度が最大になる分担比率を出しました。これを実現するには、夫の家事・育児時間は1日あたり2時間18分追加する必要があります」といいます――。
掃除用具をまとめたバスケット
写真=iStock.com/Anna Puzatykh
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家事をする父の姿

家事をする父の姿と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

私がまず思いつくのは、「クッキングパパ」というテレビアニメです。主人公の荒岩一味が作る料理を毎回「おいしそうだな」と思いながらテレビを見ていた記憶があります。

さて、大人になってから改めてアニメを見ると、不思議なことに気がつきます。

それは、「父親」である一味が料理をしているという点です。

もちろん、世の中には料理好きの父親もいるかと思います。しかし、アニメが放映されたのはバブル経済の影響も残る1992年から1995年であり、男性の長時間労働が当たり前の時代でした。また、今の時代よりも性別役割分業意識が明確であったはずです。

それにもかかわらず、父親の一味が料理を作るシーンが物語のメインとなっていたわけです。一味の生い立ちや共働き世帯という物語の設定上、不思議ではないのですが、当時の状況を考えれば、やや異質だと言えるでしょう。

家事・育児の大半を担う妻は幸せなのか

時代は変わり、現在の日本では共働き世帯が専業主婦世帯を上回るようになりました。結婚・出産後に働き続ける女性も増えています。

にもかかわらず、日本では家事・育児をするのは「夫ではなく、妻」という印象が依然として強くあり、実際に妻が多くの家事・育児を担っています。

この状況に対して妻たち、特に働く妻たちは満足しているのでしょうか。おそらく、満足していないでしょう。ネットでは妻の家事・育児に対する不満を簡単に見つけることができます。

それでは、どのように夫婦間で家事・育児を分担すれば、妻の満足度を高めることができるのでしょうか。

この問いに答えることは、夫婦の家事・育児分担のあり方を見つめ直す良いきっかけになるかと思います。

そこで、本稿では働く妻の満足度(=妻の幸福度)と夫婦の家事・育児分担の関係について分析していきたいと思います。