夫の家事・育児時間を増やすのにはどうすればよいのか

以上の点から、夫の家事・育児時間を増やすことを今まで以上に真剣に検討すべきでしょう。

「どうすれば夫の家事・育児時間を増やすことができるのか」という点は、近年「夫の家庭進出」という形で注目を集める論点だと言えます(※2)。

夫の家事・育児時間にはさまざまな要因が影響しているため、簡単な解決策はありませんが、少なくとも「長時間労働を前提とした硬直的な正社員の働き方」や「男性がより働かざるを得ない男女間賃金格差の存在」には対処していく必要があるでしょう。

これ以外にも「男性=仕事、女性=家事・育児」に代表される性別役割分業意識の解消も必要だと言えます(性別役割分業意識と夫の家事・育児時間については、「『俺より稼げたら家事やるよ』のウソ」妻の稼ぎが増えても夫の家事が全然増えない理由をご参照ください)。

(※2)「夫の家庭進出」に関する書籍として、前田晃平『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ! ママの社会進出と家族の幸せのために』(光文社、2021)があります。

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。