国や企業は「働き方の見直し」を急いでいる

もちろん、この先需要が増える産業もある。IT産業などはそうかもしれない。しかし多くの既存基幹産業については、現在の人口動態を前提としている側面があまりに大きく、今の状態のままではいずれ行き詰まる。つまり、衰退の時間軸は異なるものの、多くの産業において激変や凋落からまぬがれない可能性が高い。

国や企業もこうした状態を予測し、硬直化していた働き方の見直しを急いでいる。少子高齢化による労働力不足を補い、雇用の流動化も促すため、正社員の副業や兼業を後押ししているのは周知のとおり。大手でもロートやソフトバンク、ユニチャームが副業を解禁した。

リクルートワークス研究所が2017年6月に公開した「全国就業実態パネル調査2017」では、16年に雇用されていた人のうち、12.9%が1年間に一度以上の副業・兼業経験を持っているとされる。およそ8人に1人が何かしらのダブルワークに励んでいるわけで、決して少なくない割合だ。

副業人口の増加に伴い、市場規模も拡大している。オンライン上で、多数の人へ業務を発注することを指す「クラウドソーシング」を手がけるランサーズが行った「フリーランス実態調査2018年版」によれば、副業従事者数は744万人。経済規模はこの4年間で3倍近い、約8兆円規模に成長したと指摘している。

40代、50代でも容赦なく「決断」を迫られる

一方で、転職も、もはや当たり前の時代になっており、人材サービスのパーソルキャリアが18年9月に発表した「転職に対するイメージ」調査によれば、転職をポジティブに捉える会社員の割合は56.4%と半数を超え、20代から60代までのすべての世代でポジティブがネガティブを上回る結果になっている。約半数(49.9%)の会社員が「現在の会社では理想の働き方ができない」としており、転職経験がない会社員の約3人に1人が現在、転職を考えているという。

すでに副業、転職をしている人は少なくないわけだが、これらの人はどちらかというと、個人の事情や個別の企業の業績悪化などに伴っての「決断」を迫られた場合が多いだろう。だが、これからは、自分が身を置く産業が衰退していくなかで、否が応でも誰もが決断を迫られる「大決断時代」が到来するのだ。

20代、30代ならまだしも、40代、50代でも容赦なく「決断」を迫られる社会がこれから待ち受けているといって過言ではない。それは副業容認や転職市場の活性化など「決断」を補完する制度も整っていることからも明らかだ。