「目利きの人」の決断から学ぶことは多い

では、今の会社を辞めるか、それとも続けるのか? 辞めるのならどう転ぶのか、現在と同じ業種の企業に移るのか、それともまったく違う業界に身を置いてみるのか?

成毛 眞『決断』(中央公論新社)

組織に属さないという選択肢も当然ある。とりあえずダブルワークをしてみようと考える人もいるはずだ。選択肢が多い時代だけに迷う人も多いだろう。

一方で、経営者JP総研が2018年12月に発表した「エグゼクティブの転職に関する意識調査」によると、経営層や管理職の46.8%が「転職して失敗した経験がある」と答えている。これはあくまでも主観であるので、客観的に失敗したと見られる割合はもっと大きい可能性もある。それでも少なく見積もって、40代、50代の2人に1人が転職に失敗しているのが現実だ。

では、いかにして「決断」に伴う失敗を防ぐか? それは、成功者に学ぶしかないと著者は考えている。だからこそ新刊では、激動のメディア業界で、客観的に見てうまく「決断」できたように思われる人物を選び、取材させてもらうことにした。今、執筆を終えてあらためて実感しているが、実際、彼ら「目利き人」の決断から学ぶことは実に多かった。

この記事をここまで読み進めてくれた人は、少なからず社会人としてのキャリアや、いつかやってくるかもしれない「決断」に関心がある人のはずだ。

現役の中間管理職の立場にある人間が、当事者の言葉で、自らが身を置く産業の栄枯盛衰や下した「決断」をじっくり語ったコンテンツはこれまで少なかった。どのような形にしろ、先人たちの「決断」が、あなたの「決断」を、そして未来を後押しする一助になるだろう。

成毛眞(なるけ・まこと)
書評サイト「HONZ」代表
1955年、北海道生まれ。79年、中央大学商学部卒。自動車メーカー、アスキーなどを経て、86年マイクロソフト(株)に入社。91年、同社代表取締役社長に就任。00年に退社後、投資コンサルティング会社(株)インスパイアを設立、代表取締役社長に就任。08年、取締役ファウンダーに。10年、書評サイト「HONZ」を開設、代表を務める。元早稲田大学ビジネススクール客員教授。著書に主な著書に『面白い本』『もっと面白い本』(岩波書店)、『定年まで待つな!』(PHPビジネス新書)、『amazon』(ダイヤモンド社)など多数。
(撮影=中央公論新社写真部)
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