筑波大学の構内に“茨城最強のカフェ”がオープンした。その隣にあるのは、屋外テラス席と無料Wi‐Fiコーナーを備えたスーパーだ。どちらも誘致したのは大学側。施設使用料と売り上げの一部が大学に支払われる仕組みで、大学は「受験生へのアピールにもなる」と説明する。知名度の高い国立大学が企業誘致に力を入れる背景とは――。
「サザコーヒー 筑波大学アリアンサ店」(撮影=プレジデントオンライン編集部)

茨城最強の「サザコーヒー」が出店

10月1日、茨城県つくば市の国立大学法人・筑波大学のキャンパス内にカフェがオープンした。出店したのは、同県ひたちなか市に本店がある「サザコーヒー」。同市内に進出した「スターバックス」や「コメダ珈琲店」よりも繁盛し、隣市のJR水戸駅構内では、近くに店舗を構えるスタバをしのぐ“茨城最強のカフェ”だ。

来年で創業50年のサザコーヒーは、14店ある店舗のうち、10店が茨城県内にある。これまでも筑波大と連携し、共同開発した「筑波大学アリアンサエステートコーヒー」も2016年10月から販売する。同大・芸術系准教授の原忠信氏がパッケージデザインを手がけたコーヒーだ。だがキャンパス内に店舗を出すのは、もっと大がかりな取り組みだ。

グローバル訴求の「憩いの場」

大学構内のカフェは「サザコーヒー 筑波大学アリアンサ店」という。この店名にも双方の思いが透けて見える。今回の誘致を推進した同大の関係者はこう語る。

「筑波大学は、グローバル戦略と世界展開力を掲げています。その一環として、ブラジルのサンパウロ市内にオフィスを開設するとともに、サンパウロ大学、サンタ・クルス病院と協定を締結し、ブラジルにおける教職員、学生の研究・教育交流を深めてきました。そして、サンタ・クルス病院の石川レナット理事長が所有するアリアンサ農園の、香り高いコーヒーをサザコーヒーにお願いして商品化したのが2年前。そうしたご縁もあり、今回のカフェ出店を進めてきました」(事業開発推進室長の山田哲也氏)

サンタ・クルス病院は1924年の在ブラジル「慈善協会」の設立が前身で、開業100年近い。以来、当地の日系人と関わりの深い名門病院だ。石川理事長は日系大手電機メーカーのブラジル支社長も務め、同病院の改革を進めた経営者だ。南米コロンビアに自社農園を持つサザコーヒーがアリアンサ農園の栽培指導も行い、ストーリー性のある商品に仕上げた。

それがカフェ開業に至った理由は、緑地を借景にする「憩いの場の提供」だという。プレイスメイキング(公共空間の活性化)やサイトプランニング(敷地計画)が専門の大学教員も積極的に関わった。

「私はつくば市の街づくりにも携わりました。現在、市がめざすのはプレイスメイキングです。その一環で『憩いの場が街に開く』を掲げ、つくば駅前の商業ビル、BiViつくばの景観や設計にも関与し、サザコーヒーに1階の重要な角地に出店していただきました」(芸術系准教授の渡和由氏)

景観のグランドデザインを描き、それに賛同する地元の人気店を各施設に誘致してきた。