地場スーパー「カスミ」も口説いた

実は構内にはサザコーヒーと林立し、地場のスーパー「カスミ筑波大学店」が出店。茨城県内に102店(筑波大店含む)のほか、千葉県、埼玉県、栃木県、群馬県、東京都に合計187店を展開する。大学にとって誘致交渉はカスミが先で、学内事情とも関係していた。

「本学には世界各国の外国人留学生が、学群生(一般の大学における学部生)や大学院生、研究生、そして教員など2000人以上いて、店のすぐ近くに留学生寮もあります。そうした留学生の日常の買い物となる場所をつくりたかった。そこで3年前に地元のカスミさんと交渉したのですが、難航しました。企業側にとって大学への出店は、夏休みなど長期の休暇も多く、学内が閑散として売り上げ見通しが立ちにくいからです」(山田氏)

「カスミ筑波大学店」(撮影=高井尚之)

結局、学生のキャンパスライフの支援、教職員の福利厚生となる商品・サービスの提供だけでなく、地域住民も立ち寄れる店をめざして賛同。店舗デザインも協議して開業した。

カスミの店内は、すべてがセルフレジとなっている。イートインコーナーにはフリーWi‐Fiが使え、スマートフォンの充電器シェアリングサービスも備えた現代型の造りだ。全体としては商品構成豊かなスーパーだが、入口にチョコボールやミニガムなど「カップコーナー」と名づけた量り売り菓子がズラリと並び、外国の店舗のような雰囲気も醸し出す。

10年前に「スタバ」も誘致した

筑波大が人気カフェを誘致したのは、今回が初めてではない。2008年に別の敷地内にある中央図書館に隣接して「スターバックス コーヒー 筑波大学中央図書館店」がオープンしている。同大教授で付属図書館長だった植松貞夫氏(現名誉教授)の肝いりだった。

「2005年につくばエクスプレスが開業し、東京都内と茨城県の交通アクセスが各段に向上しました。その前から大学では『キャンパスリニューアル』の一環で、次世代の学習と交流スペース改善を掲げ、カフェに来るついでに図書館を利用する学生の増加もめざしたのです。以来10年たち、すっかり利用者に浸透し、特に留学生の利用が目立ちます」(渡氏)

筆者は2009年、神奈川県平塚市にある東海大学を訪問した際、キャンパス内の「ドトールコーヒーショップ 東海大学店」で東海大教授を取材した。当時「ドトールが大学に出店する時代になったのか」と感慨を抱いたが、すでに筑波大にスタバが進出していたのだ。

上:「ポン・デ・ケイジョ」(画像提供=サザコーヒー)/下:サザコーヒー 筑波大学アリアンサ店のコーヒー(撮影=高井尚之)

一方、サザコーヒーも2014年に県内の国立大学法人・茨城大学の図書館内に「サザコーヒー 茨城大学ライブラリーカフェ」を開業している。今回は経験者同士の連携なのだ。

「自然に囲まれた雰囲気の店で、文化面の訴求をしたいと思いました。イメージしたのはアリアンサ農園の中にあるカフェです。さらに『パンの街』であるつくばを強調するため、『ポン・デ・ケイジョ』(ブラジル特有のチーズパン)も投入。朝食を楽しめる『カフェ・デ・アマニア』(ポルトガル語で朝のコーヒー)の訴求もしています」(サザコーヒー代表取締役の鈴木太郎氏)

鈴木氏はかつて、コロンビアの自社農園の運営責任者を務め、いまでも毎年150日ほど南米やアフリカのコーヒー生産地を訪問する。そうした知見も店に注ぎ込んだ。