自民党行政改革推進本部の提言を機に、厚生労働省分割の議論が取り沙汰されている。年内にも具体案を練り、2019年の通常国会で審議を進めて、2020年には分割を実施するというのが自民党の青写真だ。01年の中央省庁再編で誕生した厚生労働省だが、かねてから何度となく分割の是非が検討されてきた。
医療や介護、年金、生活保護、雇用対策などの広範な業務を1人の閣僚(厚生労働大臣)だけで担うのは困難なことが背景にある。杜撰な年金記録管理や個人情報流出、年金支給漏れといった不祥事も続き、組織として機能不全であるとの批判もある。
分割論が再浮上したのは「旧厚生省管轄の社会保障関連の法案と旧労働省管轄の労働関連の法案が同会期中に提出され、1人の大臣が双方に答弁しなければならず、審議の渋滞が発生したため」(慶應義塾大学経済学部の土居丈朗教授)だ。分割すればそれぞれ担当大臣が就き、今よりも意思決定や審議が円滑になる。
ただし、その弊害も懸念される。社会福祉問題と労働問題は関連性が深く、「連携した対応が求められるが、下手に分割するとかつての縦割り行政が復活し、国民のニーズに応えきれない恐れがある」(同)のだ。分割はせず、厚生労働省内に複数の閣僚を配するほうが合理的な解決策だと土居教授は指摘する。
(写真=時事通信フォト)