定年後の60~74歳までの15年間は、元気で好きなことができる「人生の黄金期間」。このとき充実した第2の人生を送るには、50代から準備しておくことが重要だ。8人の実体験をお伝えしよう。7人目は「月収は6万8000円とアルバイト収入」という57歳のケースについて――。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年11月13日号)の特集「金持ち老後、ビンボー老後」の記事を再編集したものです。

東京駅到着の「地方の高齢者」を出迎えて東京案内サービス

松下正宏さん 57歳 ベルサポ社長
開業:2014年 形態:株式会社 資本金:50万円 従業員:1人 月収:6万8000円とアルバイト収入

東京駅の新幹線ホーム。黄色のジャンパーを着た松下正宏さんが、降りてくるお客を出迎える。

出迎え・送迎・同行サポートをする松下さんにとって東京駅は自分の仕事場だ。「社会的意義のある事業として、世の中に広く浸透させていきたい。そのためには細くてもいいから、長く続けていく考えです」と力強く語ってくれた。

「熊本出身だからわかるのですが、地方から東京に来るというのは非常にハードルが高い。人が多く、交通機関は複雑で、高齢者は不安に思う。そうした“旅行困難者”を手助けしたいという思いから2014年4月に起業しました」

出迎え・送迎・同行サポートを提供する「ベルサポ」設立の経緯を松下さんが説明する。具体的な事業の柱は地方在住の高齢者の東京観光を支援するもの。基本料金は1時間5000円で、追加料金は30分単位で1000円だ。

松下さんは大学で油絵を専攻、卒業後は美術関連の製造卸販売会社に入社。37歳で官公庁専門商社に転職したものの、激務がたたり体調を崩して退職し、警備会社に入った。「仕事はビルの管理で、精神的に楽でした」と松下さん。

幸い体調は回復したが、現状への焦燥感が募る。「そこでリスクが低く、自分が納得でき、社会貢献もできる仕事を考えるなかで、いまのサービスにたどりつきました」と松下さんはいう。