将棋の藤井聡太七段は、相変わらず強い。

ついこの間プロ入りして、四段でデビューしたかと思ったら、あっという間に昇段を続け、今や七段。

2018年2月、朝日杯で羽生善治氏と藤井聡太氏が公式戦初対局。藤井氏が勝利。(AFLO=写真)

藤井七段のような超新星を生み出す時代背景に注目する必要がある。天才は、遺伝だけでは説明できない。個人の資質が時代状況と出合って、「ネットワーク」のハブとして輝くからこそ、飛躍が生じる。特別な個性が時代の普遍へと通じる。

藤井七段の強さは、人工知能(AI)が台頭してきた転換期だからこそ、とりわけ顕著なものになったと考えられる。「デジタルネーティブ」を超えて、いわば「人工知能ネーティブ」とでも呼ぶべき世代が活躍し始めているのだ。

人工知能については、警戒する声も強く、また、デジタルな技術に対してアナログこそが大切だと主張する人も多い。しかし、そのような態度に拘泥していると、時代のチャンスを掴み損なってしまう。

かつて、将棋の棋士たちは、将棋ソフトを使うことに慎重だった。

数年前、羽生善治永世七冠とお話ししたときに、羽生さんは「将棋ソフトと指すのはあまり好きではない」とおっしゃっていた。

「将棋ソフトは、指し手に癖があって、人間と指すのとは違う」というのが羽生さんのその時点での評価だった。

ところが、それから2年くらい経ってから羽生さんにお目にかかったときには、おっしゃることが違っていた。

将棋が、「ビッグデータ」に接して、お互いの指し手や戦法を研究し、切磋琢磨する「スポーツ」に急速に変化しているということが、羽生さんの言葉から伝わってきたのである。