韓国と北朝鮮が休戦状態である朝鮮戦争の「終結」に動きはじめた。その背景には北朝鮮に強い影響力をもつ中国の思惑があるとみられている。著述家の宇山卓栄氏は「中国は終戦協定をテコに半島への介入を強め、在韓米軍を朝鮮半島から追い出そうとしている」と分析する――。
中国は北朝鮮という「防波堤」を必要としている――。1975年の訪中時、中国の毛沢東主席と握手する北朝鮮の金日成主席(写真=AFP/時事通信フォト)

南北「終戦協定」協議は中国の好機

4月27日の南北首脳会談の共同宣言には、「朝鮮戦争を終結させるための協議を行う」との声明が盛り込まれました。これは、休戦状態である朝鮮戦争を終結させるということであり、法的な意味以外に、何の実質的な意味がないように見えます。

しかし、中国にとっては大きな意味があります。中国は終戦協定のための協議をテコに、半島への介入を強めてくるでしょう。このことに関し、中国の習近平主席は3月に電撃訪中した金正恩委員長に何らかの指示を与えたはずです。中国は朝鮮戦争という古いネタを再利用し、何を画策しているのでしょうか。

かつて中国は1950年からはじまる朝鮮戦争に介入し、北朝鮮を支援しました。中国にとって、アメリカの影響力が朝鮮半島に及ぶことは脅威です。中国はアメリカに対する「防波堤(緩衝地帯)」として、北朝鮮の存在を必要としていましたし、今もなお必要としています。

朝鮮半島を中国に丸投げしたスターリン

国共内戦の末、1949年、毛沢東らにより中華人民共和国が建国されます。建国早々の中国には、朝鮮半島問題に介入する余裕などありませんでしたが、アメリカの影響力が朝鮮半島で拡大することは放置できません。この時、中国が朝鮮戦争に介入する唯一の重大な基準としたのが、アメリカの動向でした。

朝鮮戦争が起こる前、金日成は中国に参戦を依頼しています。毛沢東は条件付きで、参戦を認めます。その条件とは、「中国は鴨緑江に軍を配置するが、アメリカが38度線を越えなければ、中国は半島に干渉しない」(*1)というものでした。