文在寅は「在韓米軍撤退」に動くのか

中国は、「朝鮮戦争が終結すれば、在韓米軍がとどまる根拠が失われる」とするロジックをアメリカ側に押し付けてくる可能性があります。中国にとって、半島におけるアメリカ軍の脅威を取り除くことが朝鮮戦争時代からの一貫した国策であり、これについて譲歩することはありません。

どう転ぶかわからないのは、モンロー主義者のトランプ大統領でしょう。在外米軍の縮減は大統領の公約です。日本は警戒しておかなければなりません。

文在寅大統領は5月2日、「在韓米軍は韓米の同盟関係に関する問題であり、平和協定とは一切無関係」と述べ、仮に朝鮮戦争の終結が決まった場合でも、在韓米軍撤退にはつながらないとしました。一方、大統領府の統一外交安保特別補佐官は外交専門誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿の中で、「平和協定が締結されれば、陸海空全ての米軍兵士の韓国駐留に疑問が生じる」と述べました。(*2)

文大統領の側近が、中国や北朝鮮の狙いに沿って発言しているという事実を踏まえ、文大統領の本音がどこにあるのか見極めるべきでしょう。

(*1)朱建栄『毛沢東の朝鮮戦争―中国が鴨緑江を渡るまで』(岩波現代文庫)2004年
(*2)文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別補佐官が4月30日に寄稿したアメリカの外交専門紙「フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)」の記事より

宇山卓栄(うやま・たくえい)
著作家。1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『経済を読み解くための宗教史』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)、『「民族」で読み解く世界史』(日本実業出版社)などがある。
(写真=AFP/時事通信フォト)
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