4月27日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、朝鮮半島の「完全な非核化」の実現を共通の目標に掲げた板門店宣言に署名した。非核化は実現するのか。南北会談の前に、大前研一氏が考えていたこととは――。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2018年4月23日発売号)の連載「大前研一の日本のカラクリ」を再編集したものです。

「君が代」放送で炎上した、韓国テレビ局

平昌の冬季五輪で日本は金4、銀5、銅4と合計13個のメダルを獲得し、長野五輪の10個を上回って冬季五輪では過去最多の成果を残した。「最強ジャパン」と日本のメディアは大騒ぎだったが、日本よりはるかに小国で日本よりも多くのメダルを獲得した国が5つある。

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ノルウェー(金14、銀14、銅11)、オランダ(金8、銀6、銅6)、スウェーデン(金7、銀6、銅1)、スイス(金5、銀6、銅4)、オーストリア(金5、銀3、銅6)である。オランダは1000万人を超えているが(1700万人)、あとはいずれも人口500万~900万人程度の小国だ。

驚くべきはノルウェーで、ドイツ、カナダ、アメリカなどの大国を抑えてメダル獲得数は堂々第1位。金14個を含む39個は冬季五輪史上最多である。「ノルウェー人はスキーを履いて生まれる」と言われるスキー大国。ノルディックスキーの発祥の地で、ノルウェーの人々は幼い頃から自然を相手にするスポーツに慣れ親しみ、あらゆる世代を通じてクロスカントリーが盛んだ。そのあたりに冬季五輪に強い秘密があるのだろうが、ノルウェーの人口は約520万人。日本で言えば北海道の人口にほぼ等しい。日本だって札幌と長野で2度冬季五輪を開催しているぐらい雪と氷には恵まれているわけで、今回の平昌五輪の結果に満足しているようでは目線が低すぎる。子供たちがもっと気軽に雪や氷に接することができるように、ウインタースポーツが生涯スポーツになるように、競技人口を増やす努力をしていくべきだ。

韓国では日本帝国主義の象徴

平昌五輪から正式種目に採用されたスピードスケートの女子マススタートで日本の高木菜那選手が見事に金メダルを獲得して初代女王になった。その晴れがましい表彰式の裏でちょっとした騒動があった。表彰式の様子を生放送した韓国の3大ネットワークの1つ、SBSが「君が代」を流したことが物議を醸したのだ。

韓国では日本帝国主義の象徴であり、植民地時代を想起させる「君が代」を流すことはタブーとされている。SBS以外の放送局は君が代が流れた時間帯をCMに切り替えたり、男子マススタートで金メダルを獲得した韓国選手のリプレー映像を流したりした。君が代を流したSBSには韓国国内で批判が殺到したという。

この問題が日本で報じられると、「またか」といううんざりした反応がネットに溢れた。国家間で「最終的かつ不可逆的に」解決した問題を蒸し返してくる隣国への嫌気や不満はわからなくはない。しかし、先の戦争を総括しないまま「日の丸」「君が代」を使い続けている側にも問題があるわけで、そのことに理解が及ばない日本人が多すぎる。