韓国人からすれば、北の核放棄は前提条件ではない。なぜなら統一すれば人口7000万~8000万人の日本に比肩する大国、さらに日本をオーバーテークして堂々の核保有国になれるからだ。金王朝の取り扱いも現状維持でOK。

ただし平和条約を締結して往来や交易の自由化を進めていけば、今まで国民に語っていた韓国に対する嘘がバレ、民衆蜂起や側近による暗殺で金王朝は自滅するだろう。太陽政策で時間をかけて融和を進めて、最終的には「核付き金なし」で南北統一。韓国人の8割はこの夢を見ている。

相手を口説くか、それともイスを蹴り上げるか

米朝首脳会談については、あまり期待しないほうがいいだろう。そもそも首脳会談を提案した金委員長の伝言は、韓国が仲介してアメリカに伝えられたにすぎない。外交ルートを通じてトランプ政権が北朝鮮と話し合って合意したわけではないのだ。

トランプ大統領は金委員長との首脳会談について、「私はすぐに立ち去るかもしれないし、席について北朝鮮を含めた世界のすべての国にとって最高のディール(取引)を成し遂げるかもしれない」と演説している。トランプ大統領は「金正恩と直接会えば、核問題は解決できる」と意気込んでいるが、彼にとって米朝首脳会談はあくまでディールでしかない。脅してすかして、相手が戸惑っているうちに合意を取るのがトランプのやり方だ。口説いてベッドに連れ込めればディールは成立。失敗すればイスを蹴り上げて、部屋を出ていく。

通常、首脳会談は成果を共同コミュニケなどで発表するものだが、トランプ大統領は通常の外交プロセスが大嫌いだから、妥協や譲歩でお茶を濁した決着の付け方にはならないだろう。トランプ大統領が脅しまくって、金委員長がそれをあからさまに拒否したり、イエスともノーとも態度をハッキリせずに物別れに終わったりすれば、北朝鮮への直接攻撃(鼻血作戦)に踏み切る可能性は少なくない。あるいは金委員長がトランプ大統領に泣きついて、体制保証なり亡命先をこっそりと求めてくる可能性もある。中国とアメリカが話し合えば、それも可能だろう。

いずれにしても、それは米朝首脳会談が実現したらの話で、流れても不思議ではない。トランプ大統領は北朝鮮が表明した「非核化」という言葉に食いついたようだが、朝鮮半島で核を持っているのは北朝鮮だけではない。朝鮮半島の非核化の条件には在韓米軍の撤退も含まれる。だから、中国やロシアは北朝鮮の「非核化」提案を歓迎したのだ。メインテーマの「非核化」で躓きかねない米朝首脳会談が本当に開催できるかどうか、鍵を握る中国の対応を含めて注目される。

(構成=小川 剛 写真=KNS/KCNA/AFP/AFLO、iStock.com)
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