韓国と北朝鮮が4月末の首脳会談開催で電撃合意した。だが事態は予断を許さない。アメリカが北朝鮮に軍事攻撃を行う可能性はまだ消えてないからだ。アメリカは「軍産複合体を儲けさせるために世界で戦争を起こしている」との非難も受けてきた。だが著述家の宇山卓栄氏は「経済という観点から見れば、アメリカが北朝鮮攻撃に踏み切る可能性は小さい」とみる。なぜ「第二次朝鮮戦争」でアメリカは儲からないのか――。
「戦争が景気の刺激策に」というのはもう過去の話なのか。米F35戦闘機の生産ライン。(写真=Randy A. Crites/Lockheed Martin/ロイター/アフロ)

「軍需産業を潤すための戦争」は本当か?

1939~1945年 第2次世界大戦
1950~1953年 朝鮮戦争
1961~1973年 ベトナム戦争
1991年 湾岸戦争
2003年 イラク戦争

アメリカは上記のように、ある一定の期間で大規模な国際戦争を繰り返してきました。2003年のイラク戦争から、15年が経過しようとしています。朝鮮有事のリスクが高まる中、イラク戦争に続いて「第2次朝鮮戦争」が勃発(ぼっぱつ)する可能性はあるのでしょうか。

アメリカが定期的に戦争を行う理由として、「軍需産業を潤すため」といわれることがあります。では、そのような理由で、今後も戦争は続くと見るべきでしょうか。アメリカにとって、戦争はもうかるのでしょうか。

軍拡を後押ししたケインズ派経済学者

1950年6月に朝鮮戦争が起きる前、アメリカでは、軍拡に関する議論が繰り広げられていました。国家安全保障会議(NSC)は、ソ連などの共産主義勢力を封じ込めるための新たな戦略方針を、「国家安全保障会議第68号文書(NSC-68)」にまとめ上げます。

この文書は、共産主義に対抗するために軍事支出(国防費)の水準を従来の4倍(1951~1955年会計年度の5年間で少なくとも2250億ドル)に引き上げ、軍備を増強しなければならないと求めていました。

当時のトルーマン大統領は、軍拡がアメリカ経済にどのような影響を及ぼすかを慎重に見極めようとしました。トルーマンは大統領経済諮問委員会(Council of Economic Advisers, 略称CEA)に調査をさせます。委員のレオン・カイザーリングなどのケインズ派の経済学者は、軍拡によって有効需要が創出され、景気刺激効果が経済の好循環を生むと評価しました。

トルーマンはこの答申を踏まえ、「NSC-68」を全面採用し、軍拡路線に大きくかじを切ります。予算の裏付けを取りながら、アメリカは朝鮮戦争に深く関わっていきます。