「朝鮮半島の非核化」に向けて合意した米朝首脳会談から3週間もたたないうちに、またぞろ北朝鮮の核開発続行疑惑が浮上した。そのかたわらで韓国の文在寅政権は、アメリカ軍から韓国軍への「『戦時作戦統制権』の移管」を進めている。在韓米軍の縮小・撤退につながりかねない動きを、なぜこのタイミングで進めるのか。背景には、韓国現代史に刻まれた深い屈辱の記憶があった――。
北朝鮮軍の猛攻に韓国軍は崩壊した――北朝鮮軍機の機銃掃射で破壊された友軍のトラックを横目に、後退する韓国軍の兵士たち(1950年7月9日。写真=AP/アフロ)

非核化交渉の「裏切りの歴史」

米朝首脳会談から3週間もたたない6月30日、アメリカのNBC放送は、複数の米政府関係者の話として、北朝鮮が複数の秘密施設で核を増産している模様だと報じました。「彼らが手持ちの核兵器を削減したり、その生産を停止したりした証拠はない。一方で、彼らがアメリカを欺こうと試みている非常に明白な証拠がある」と、情報当局の最新の報告書を見た政府関係者は述べたとのことです。(*注1)

北朝鮮の非核化交渉は「裏切りの歴史」の繰り返しです。1991年12月、当時の金日成(キム・イルソン)主席と盧泰愚(ノ・テウ)大統領の間で「朝鮮半島非核化宣言」が合意されましたが、その翌年には国際原子力機関(IAEA)の査察で核開発疑惑が発覚します。1994年の米朝枠組み合意、2005年9月の6カ国協議での「共同声明」のいずれも、北朝鮮の核開発を止めることはできませんでした。

アメリカは今回、非核化を確実にするため、6カ国協議の当初と同様に「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を求めていましたが、6月12日の米朝首脳会談の共同声明にはCVIDの文言が入らず、問題視されていました、とはいえ、CVIDが入ろうが入るまいが、結局、北朝鮮は核を放棄するつもりなどありませんから、いかなる合意も紙屑になるだけです。今後、交渉が決裂した時に、アメリカが軍事オプションも含めどのような制裁措置を取るかが重要になってくるでしょう。

米朝首脳会談からの帰国直後、トランプ大統領は「もう核の脅威はない」などとツイートしていました。こういう前のめりの発言に、いちいち細かく突っ込んでも仕方のないことです。良くも悪くも、トランプ大統領はそういうキャラクターなのですから。