7月の米ロ首脳会談で、トランプ米大統領を手玉に取ったプーチン・ロシア大統領。米大統領選への介入疑惑やクリミア半島の併合など、突っ込まれるところはいくらでもあったのに、最終的にはトランプに一方的な譲歩をさせて終わった。まさに向かうところ敵なしのプーチンだが、著述家の宇山卓栄氏によれば、そんな彼が師と仰ぎ、銅像まで建てた、日本人が知らないロシア皇帝がいるという――。
トランプが「ロシアのため」に動く理由
7月に開かれた米ロ首脳会談の後、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は共同記者会見を開きました。米大統領選(2016年)へのロシアの干渉について、トランプ大統領は「なかった」と述べ、プーチン大統領の主張を受け入れました。この発言について、身内の共和党からも「利敵行為だ」などと批判が上がっています。
ロシアによるクリミア半島併合(2014年)についても言及せず、核軍縮についても、プーチン大統領が「アメリカの核戦力は極めて危険」と指摘したのに対し、トランプ大統領は反論しませんでした。結局、首脳会談では何の合意もできませんでした。
6月の米朝首脳会談と同様に、米ロ首脳会談でもトランプ大統領は譲歩するばかりで、具体的な成果はありませんでした。日本でも、当初トランプ大統領を支持していた人たちでさえ「どうもおかしい」と疑問を呈しています。トランプ大統領の外交が一般に言われているように、秋の米中間選挙向けのパフォーマンスであるならば、由々しきことでしょう。
パフォーマンスなら、まだマシかもしれません。トランプ大統領が「利敵行為」をとるのはロシアに操られているからだ、と明言する人もいます。その1人が、元中央情報局(CIA)諜報員のグレン・カール氏です。
カール氏は去る5月に来日し、東京の日本記者クラブで会見しました。2016年の大統領選挙の際、ロシアの諜報機関がトランプ陣営に何百回も接触し、クリントン陣営に対する選挙妨害などをはじめ、トランプ陣営に有利になるよう図ったとされる「ロシアゲート事件」は、カール氏によると「明らかに存在する」とのことです。