約30年前にマイホームをローンで購入した人たちが、定年を迎えつつある。その老後は厳しい。当時の金利は高く、4000万円の物件であれば、総返済額は8000万円を超える。家を売りに出そうとしても、駅から遠い戸建てを買う人はいない。銀行に言われるがまま、高金利を払い続けてきた結果、老後の暮らしはカツカツだ。そうした「悲劇」を繰り返さないポイントとは――。

結婚前に「頭金0円」「低利ローン」でマイホーム買う若者

20~30代の若いカップルから家計相談を受けていて、驚かされることがある。

数年前から「まだ結婚していないのですが、共有名義のマンションを購入している」といったケースに何度も遭遇するようになったのだ。

写真はイメージです(写真=iStock.com/JamesBrey)

ある30代のカップルの場合、「まだ結婚するつもりはなかったんですが、たまたまデートの途中で分譲マンションのモデルルームを見学したら、すごく気に入って、『じゃあ、買って一緒に住もうか』と話が盛り上がり、一気に結婚する運びとなったんです」という。

デートでモデルルームへ行くかという不自然さや、それに乗じた形の変則的プロポーズはいかがなものかと思うが、現実の話だからしかたがない。

現在、そのカップルはすでにその分譲マンションに引っ越し、婚姻届を出し、新婚旅行も済ませている。ただ、結婚式はこれからで、奥さんが妊娠4カ月のため結婚披露宴は赤ちゃんと一緒になる可能性が高いらしい。

いやはや、結婚に対する価値観や順序も変わったのだなぁと感じつつ、「頭金はどうされたんですか?」と聞くと、こうあっけらかんと答えてくれた。

「『頭金0円でも買えますよ』って担当者さんが。それに、住宅ローン金利がものすごく低かったし、返済額はそれぞれの家賃の合計よりちょっと高いくらいみたいだし。今買ったほうがオトクかな、と思って」

たしかに、ここ20年ほど住宅ローン金利は、非常に低い水準で推移している。頭金など自己資金がなくても、また、それほど高くなくても収入がある程度安定していれば、このカップルのように住宅ローンを組めてしまうのも事実だ。

▼30年前に購入した物件の住宅ローン残高がまだ残っている

しかしその一方で、長いこと住宅ローンに苦しむ人もいる。

例えば、高金利だったバブル期にマイホームを購入した人々だ。30年前に30歳前後だった世代であり、いまは老後資金をせっせと貯めるべき時期だが、そんな余裕のないケースも少なくない。なぜなら、住宅ローン残高が予想以上に減っていないからだ。

新築で購入したピカピカの物件も、いまや築30年以上。しかも、バブル期にサラリーマンが購入できた物件は、都心部への通勤にバスと電車を乗り継ぎ片道2時間近くかかるような郊外物件で、いまでは売却も難しい。よしんば、売れたとしても住宅ローン残高とトントンくらいでは買い替えも容易ではない。退職金で一括返済という手もあるが、老後資金に大きな影響が出てくる……。

今回は、そんな八方ふさがり状態の「バブル期にマイホームを購入した人」について見てみよう。