社内の「志」を、1つにまとめる

経営者だったら、工場や店を閉め、ともに戦ってきた社員を解雇するのは、嫌で当然だ。それが、リーダーだ。ところが、新興国の追い上げや技術革新の遅れで逆風が強まると「会社の存亡がかかっている」とリストラを重ね、「歯を食いしばって苦境を乗り切る」などと宣言はするが、そんな状況になった経営責任はとらない例が目につく。時代の変化に手をこまぬいていた非力さを認め、自ら決めて退くことも、少ない。

東洋紡 社長 楢原誠慈

もっと悪い例は、何かの拍子に風向きが変わり、ちょっと経営が楽になると改革の手を緩め、現状に安住して将来への布石を打たなくなることだ。それでは、社員たちは「明日への希望」を持てず、暗くなりがちとなる。「繊維業界の名門」とされた東洋紡績(現・東洋紡)も、20世紀が終わるまでは、そんな1社に挙げられた。

だが、楢原流は違った。21世紀の初め、管理部で決算グループと計画・管理グループのマネジャーを兼ね、各事業部門や生産現場との協議でリストラにめどをつけながら、「将来への投資」も考え抜く。何代かの経営者が先送りしてきた構造改善との二正面作戦を、軌道に乗せるため、部下たちを各部門へ走らせて構想づくりに参加させた。社長との対話も、緊密に重ねる。2002年5月には経営企画室のマネジャーも兼務し、動きに拍車をかける。四十代の後半だ。