新聞各紙の社説は「今日は何の日か」を意識している。8月11日は2回目の祝日「山の日」。翌12日は日航ジャンボ機墜落事故の命日。そして15日は「終戦の日」だった。「終戦の日」は各紙とも1本の大きな社説を書く。それに比べ、2回目の「山の日」に触れたのは全国紙5紙では産経新聞だけだった。さらに32年前の日航機墜落事故について書いた全国紙はひとつもなかった。
調べてみると、事故から30周年だった2年前は、朝日をのぞく4紙が社説のテーマにしている。一方、朝日は1本社説で「川内原発再稼働」について書いていた。ほかの紙面では事故を深く掘り下げていたが、社説でも「世界最悪の航空事故」を振り返るべきではないか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が問う。

山の日の意義は「豊かな自然の再認識」

まず産経と東京の「山の日」の社説(ちなみに産経は「社説」ではなく、赤旗と同じ「主張」)を取り上げてみよう。

産経社説はこう書き出す。

「2回目の『山の日』を迎えた。国土の約7割を広い意味での山が占めるわが国では、どの場所にあっても山を身近に感じる機会が多い」

「山笑う、山滴る、山粧(よそ)う、山眠る。これら春夏秋冬の季語に表象されているように、日本の山の景観は季節ごとに多彩に変化し、自然は常に新鮮な驚きをもたらしてくれる」

産経社説はこう書いたうえで「『山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する』と定めた祝日法の趣旨は、山の豊かな自然を再認識することでもあろうか」と読者に山の日の意義を再確認させる。

「驚異」は「脅威」にもなる

さらに産経社説は「山に登れば森林の匂いや珍しい動植物、頂上や尾根からの眺望など、自然が用意したさまざまな驚異に出合うことができる。一方で『驚異』は、往々にして『脅威』にもなることを断じて忘れるわけにはいかない。山の魅力は、登山者の安全が確保されてはじめて享受できるものに違いない」と書く。

「驚異」が「脅威」になるところなど少々、言葉遊びではあるが、山の魅力は安全の上に成り立っていること自体は、その通りである。

後半で産経社説はこうも書く。

「忍耐力の増強を図り、恐怖を克服するのも確かに修練の一つであり、必要以上に恐れるのは決して賢明とは言えないが、登山の何よりの喜びは無事に登頂し、無事に下山することにあるはずだ」

「知恵を働かせることによって見えない危険を想像し、臆病になることも登山者の心得であると、深く銘記したい」

それゆえ見出しも「臆病も勇気のうちである」と付けてある。