産経社説に「穏健な現実主義」といわれたくない
8月22日付の産経新聞の社説(主張)は、バノン氏の解任を前向きに捉え、「現実路線への転換求める」という見出しをつけている。記事では「期待されるのは、米国が国際協調と自由貿易を重視する穏健な現実路線へ転換することである」と書く。
産経が「国際協調」「穏健な現実主義」と書くと、違和感がある。産経が強調する「現実主義」はいつも過激だからだ。
続けて産経社説は「先月末、軍人出身で規律を重視するケリー大統領首席補佐官が就任し、政権立て直しに着手した。バノン氏解任は、その一環でもあるのだろう」と書いたうえで、バノン氏をこう批判していく。
「すべてバノン氏の責任」なのか?
「バノン氏は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱やメキシコ国境の壁建設、移民・難民の入国規制など『米国第一』政策を次々と主導した。それが行き過ぎて分断を招かなかったか」
「地球温暖化防止のための国際枠組みであるパリ協定からの離脱を進めたのもバノン氏である。北朝鮮やシリアなど国際問題への関与には消極的だった」
「バノン氏は左派系誌に、北朝鮮への軍事攻撃を選択肢とする政権の方針に反し『軍事的解決策はない』と語り、これが解任の決定打になったとされる」
TPP離脱、メキシコ国境の壁、移民・難民の入国規制、パリ協定からの離脱……。産経社説はこれらのトランプ政権の異常さが、すべてバノン氏によるものだったと読者の脳裏に擦り込んでいく。
読者を混乱させる産経社説の主張
産経社説は「これまでも『独走』するバノン氏は政権の内紛の火種だった。だが、大統領選では、バノン氏の排他主義的主張が、白人労働者層の支持を広げた。トランプ氏勝利の『功績』は小さくない」と書いた後、次のように主張する。
「そのバノン氏を切る政治的なリスクをあえて選ぶ以上、明確な路線転換を示してもらいたい。この際、トランプ氏自身が変わり、『米国第一』一辺倒でない、柔軟姿勢を取り入れてはどうか」
米国第一主義を否定し、柔軟姿勢を目指せというのである。