ここで産経の読者は混乱する。なぜかと言うと、これまでの産経は、トランプ政権を擁護していると受け取られても仕方のない記事を載せることが多かったからである。
「日本第一主義でいこう」という空恐ろしい産経コラム
たとえば今年1月22日付の紙面(1面)に編集局長名で掲載された「トランプ大統領就任 『日本第一』主義でいこう」というコラムである。
前半で「『アメリカ・ファースト(米国第一)』のたった一言で、トランプ大統領はさっそく世界を動かしている」と指摘し、「英国のEU完全離脱が現実化しつつあるいま、世界は行き過ぎたグローバリズムの調整期に入った。世界で最も豊かな8人が貧しい36億人分の資産を保有している世界は、明らかに異常だ。同じ金持ちでも『俺たちの気持ちがわかる』と労働者に信じさせたトランプ氏が米大統領になったのは何の不思議もない」と言い切る。
そのうえでこう指摘する。
「TPPやNAFTAなんぞはくそ食らえ、メキシコとの国境にはもちろん、壁をつくる…」
「これまで『自由の国』米国では、思いもよらなかった政策が次々と現実化するのをわれわれは目撃することになろう」
そして後半でこう主張する。
「『米国第一』主義には『日本第一』主義で対抗するしかない」
「日本人は日本でつくった製品を買い、この国の農産物を食べよう。安全保障も米国におんぶにだっこではなく、もっと防衛力を整備しよう」
このコラムを読むと空恐ろしくなる。これまで世界が築き上げてきたグローバリゼーションを真っ向から否定しているからだ。ただ幸いなことにトランプ氏の政策はどれも成功していない。
それにしても1面に編集局長名でこんなコラムを掲載してきた産経新聞ゆえに、社説で「元凶はトランプ氏自身だ」とストレートに主張できないのだろう。
「辞任ドミノ」と書く読売社説
読売新聞の社説(8月23日付)は見出しが「側近更迭を機に路線を見直せ」である。産経社説と似ている。
だが読売社説はトランプ氏を明確に批判している。
たとえば書き出しでは「最近1カ月間で、高官が辞めるのは4人目だ。首席補佐官や報道官らの重職の『辞任ドミノ』を引き起こしたのは、トランプ氏にほかならない」と指摘している。
続けて「問題なのは、トランプ氏が就任後も、選挙戦の成功体験から、政治や行政の見識を欠くバノン氏に強大な権限を与えたことだ」とも書く。
「辞任ドミノ」と書かれると、この沙鴎一歩も「なるほど」と思わず納得してしまう。トランプ氏の側近が次々と更迭させられていくのを見るに付け、トランプ政権の傲慢さが浮き彫りになったからである。