トランプ米大統領の就任から半年がたった。世界はどう変わったか。保守的な日本経済新聞が、社説で「大統領任期はあと3年半あるが、何もせずに下降線をたどって終わるのではなかろうか」と大胆な予測をしている。その背景には、「力強いアメリカ」と「それに付き従う日本」という世界観が投影されている――。

「就任半年」でも何も進まない現状

7月20日付の日本経済新聞と東京新聞の社説がおもしろい。2紙の社説のテーマはともに「トランプ米大統領就任、半年」である。このテーマ自体はありきたりだが、大国アメリカ抜きの世界を真剣に考えている。しかも東京はともかく、保守的な日経が「トランプ政権によって米国の存在感が消えた」とまで言い切っているのだ。

日経と東京の社説を中心に読み解きながら「今後、日本はトランプ氏とどう付き合っていけばいいのか」について考えてみたい。

「いまほど存在感を失った米国は記憶にない」

日経の社説から見ていこう。「米国が超大国になって1世紀になる。『米国第1』はいまに始まったことではない。国益にしがみついて無謀な戦争を始めたり、金融市場を混乱させたり、と世界を振り回してきた」と前置きしてから「だが、いまほど自国に引きこもり、存在感を失った米国は記憶にない」と指摘する。

そのうえで「『米国抜きの世界』が本当にやって来たともいえる。私たちはこの新しい秩序、いや、無秩序にどう向き合えばよいのだろうか」と疑問を提示する。

それゆえ見出しも「『米国抜き』の世界が本当にやってきた」なのだろう。

ただ分からないのは「無秩序」という表現である。ここで言う無秩序とは混乱状態を指すが、アメリカが第1主義に走るそのこと自体が無秩序なのか、それともアメリカが世界の政治や経済から姿を消すと結果的に世界が無秩序になるのか。そのどちらだろうか。

日経のこれまでのスタンスから判断すると、後者だろう。日経にはアメリカにこれまでのように力を持っていてほしい、力強い姿を見せてくれという願望があると思うからだ。

「何がしたいのかがわからない」

少々脇道にそれてしまったので話を戻そう。

続けて日経社説は「トランプ米大統領が就任して半年を迎えた。メディアとしては、ここがよい、ここが不十分だ、とそれなりの通信簿をつけるタイミングである」「残念ながら、トランプ政権はありきたりの論評にはなじまない。長所や短所を探そうにも、そもそも何がしたいのか、誰が主導しているのかがよくわからない」と書く。

社説でアメリカの大統領を「何がしたいのか、誰が主導しているのかがよくわからない」とまで書いた新聞社がこれまでにあっただろうか。