7月24日と25日、安倍晋三首相や関係閣僚が、加計学園の獣医学部新設問題や陸上自衛隊の“日報廃棄”をめぐる稲田朋美防衛相の発言などについて、国会で答弁した。だが、各紙の社説は、これまでと何ら変わらないありきたりの論評ばかり。「印象操作」という言葉を連発する安倍政権の「体質」を掘り下げる言葉は見当たらない。これでいいのか――。

「腹心の友」に便宜を図るためなのか

7月25日付の朝日新聞の社説は、冒頭から「安倍首相の『腹心の友』に便宜を図るために、公正であるべき行政がゆがめられたのか」「首相が出席したきのうの衆院予算委員会の閉会中審査でも、疑念が晴れることはなかった」と安倍晋三首相の答弁を批判している。

さらに、「内閣支持率の急落と相次ぐ選挙での敗北を受け、低姿勢で臨んだ首相だが、肝心な点になると、政府側の答弁はあいまいな内容に終始した。約束した『丁寧な説明』にほど遠い」と厳しく指摘する。

実に朝日らしい反権力的姿勢の社説である。

この批判に続いて「このまま加計学園による獣医学部の新設を進めても、多くの人の納得が得られるはずがない。国家戦略特区の認定手続きをいったん白紙に戻し、プロセスを踏み直すべきだ」と主張する。見出しも「特区の認定白紙に戻せ」だ。

読み手は思わず「その通り」と肯定し、“朝日好き”な人は拍手を送るだろう。

続いて朝日社説は「首相は、加計学園が特区に手を挙げていること自体、知ったのは、学園が事業主体に決まった今年1月だと答弁した」「にわかに信じがたい」「首相だけが知らなかったのか」と安倍首相を追及する。

「首相の低姿勢」を評価する読売社説

この朝日社説に対し、保守の読売新聞の社説(同じ7月25日付け)は「『私の友人が関わることだから、国民から疑念の目が向けられるのはもっともだ。今までの答弁はその観点が欠けていた』と反省の弁を述べた」「内閣支持率の低下に関して『私の答弁の姿勢についての批判もあろう』とも語った。首相は従来、野党の批判に『印象操作だ』などと反論することが目立ったが、この日は終始、低姿勢だった」と書く。

なるほど、“安倍政権擁護”の読売だけある。「約束した『丁寧な説明』にほど遠い」と批判する朝日社説とは正反対の評価だ。同じ加計学園問題に対する安倍首相の答弁を扱った社説でも180度違う。だからこそ、新聞の社説は読み比べる必要がある。

続いて読売社説は「問題の焦点は、国家戦略特区による獣医学部新設を巡って、加計学園への便宜供与があったかどうかだ。複数の参考人が答弁したが、行政の違法性を示す明白な事実は指摘されなかった」と、さらに安倍政権寄りに筆を進める。

「前川喜平・前文部科学次官は、昨年9月に和泉洋人首相補佐官から早急な対応を求められたと改めて語った。和泉氏が『総理は自分の口から言えないから、私が代わりに言う』と述べたという」と前川氏の答弁を書いたうえで、「和泉氏は、この発言自体を否定したうえ、規制改革全般について『スピード感を持って取り組むこと』を求めたと反論した。首相と理事長の友人関係を認識したのは今年3月だったと述べた。首相も、学園による学部新設申請を知ったのは今年1月だと説明した」と擁護を繰り返す。