ここ最近のニュースといえば、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題と、東京都議選での小池百合子知事率いる「都民ファーストの会」の歴史的圧勝だろう。こうしたニュースへの各紙の社説の書きぶりを、毎日新聞と産経新聞が7月5日付の紙面で検証している。しかし、毎日も産経も消化不良で、後味が悪い。「面白くない」といわれる社説を自画自賛すれば、読者は逃げ出すばかりだ――。

毎日は「書き手の見方」がない

まずは毎日新聞。中面のオピニオン面に「社説を読み解く」と題し、「加計学園の学部新設問題」を取り上げている。書き手は論説委員。前文(リード)はこうだ。

「自民党が東京都議選で歴史的惨敗を喫した。この要因のひとつとされるのが加計学園をめぐる問題である」などと書き出す。冒頭に「都議選」の単語を置いたのは、できるだけホットなニュースを……と考える新聞記者の癖だ。

この場合、「都議選うんぬん」はなくていい。なぜかといえば、加計学園問題はいまも続いている大きなニュースだからである。

少々余計なことを指摘してしまった。前文に戻ろう。

毎日の社説検証の前文は「愛媛県今治市に学部を新設する計画について『総理のご意向』などと記された文書が、文部科学省内で見つかったのが発端だ。学園の理事長は安倍晋三首相の友人で、首相の意向が実際に働いたのかどうかが焦点となった」「首相は計画への関与を否定している。だが、野党は引き続き真相解明を求めている」と続く。

単にこれまでの経過を簡単にまとめ上げたものにすぎない。この前文にどうして書き手の思いを入れないのか。ごく短くていい。署名記事ゆえ、書き手の思いを少しでも入れれば、読者との距離が短くなるはずだ。せっかくの署名記事が台無しである。

「一貫して事実関係の解明を求めてきた」は書き過ぎ

そして前文の最後が「この問題に関する各紙社説の論調は大きく割れた」だ。これを読んで読者は「新聞社ごとに論調がかなり違っているのか。おもしろい」と興味をそそられるのだが、果たしてこの期待は裏切られる。

毎日の社説検証の本文は、というと次のように始まる。

「文書は5月17日、衆院文科委員会で取り上げられた。内閣府からの伝達事項として、学部の早期設置に関し『官邸の最高レベルが言っている』『総理のご意向だと聞いている』などと記されていた」「当時、松野博一文科相は文書を確認しておらず、菅義偉官房長官は『怪文書』と評した」

問題の文書が5月17日の衆院文科会で取り上げられたのは間違いないが、最初に文書を特ダネとして記事にしたのは、5月17日付の朝日新聞の朝刊(1面トップ)だ。この記事が出た後、すぐにその日の夕刊で追いかけたのは、毎日だったはず。朝日のこの特ダネがなければ、国会でも取り上げられなかった。毎日の社説検証はそのことにまったく触れていない。

それにもかかわらず、「毎日新聞と朝日新聞は一貫して事実関係の解明を求めてきた」と書くのはちょいと書き過ぎではないか。