週刊新潮が「『文春砲』汚れた銃弾」として『週刊文春』を告発する記事を、5月25日号から2号続けて掲載している。新潮は文春を「スクープ泥棒」と呼ぶ。しかし、あらゆる手を尽くして情報を取ることが一方的に悪いといえるのだろうか。『週刊現代』『フライデー』の編集長を歴任した元木昌彦氏が問う――。

「親しき仲にもスキャンダル」

私見だが、週刊誌編集長には大胆さと繊細さが必要だと思う。毎週のようにスクープを発信している『週刊文春』新谷学編集長は、見かけは女性誌編集長のように軽やかに見えるが、その決断力と実行力は「剛毅」という言葉がぴたりとくる編集長である。口癖は「親しき仲にもスキャンダル」。

この男ただ者ではない。そう感じたのは、彼が編集長になってすぐの頃、「小沢一郎の妻からの離縁状」という特集を読んだ時だった。私は現役時代、小沢一郎批判キャンペーンを毎号続けた。そこでは政治的な話題ばかりではなく、愛人問題や別の女性が生んだ隠し子についても追及した。そのとき一緒にやっていたライターの松田賢弥氏が離縁状をスクープしたのだ。

小沢の妻が地元の有力支援者に出した手紙には、愛人のことはもちろん、隠し子についても、東日本大震災が起こり小沢が関西方面へ避難すると慌てたことにも触れていた。内容はおもしろいが私信である。訴えられたら負けるかもしれない。彼はこう考えた。

「あの手紙を報じる公共性・公益性はある。日本の政治を長い間牛耳りコントロールしてきた小沢の人物像をつまびらかにした超一級の資料」。そう決断して全文を掲載した。

彼の編集方針は出版社系週刊誌の王道である。少ない人数と情報量。あれもこれもと追いかけていたら時間もカネもかかる。そこで「選択と集中」する。育休不倫の宮崎謙介前議員は小物だが「イクメン」宣言したため注目度が上がり、ほかに女性がいるはずだと追いかけた。

ショーンKは、フジテレビのニュースの顔になるので「どんな人だろう」と経歴を調べさせた。甘利明経済再生相のスキャンダルは大新聞が断って文春に回ってきた。舛添要一前都知事は、海外視察に湯水のようにカネをかけるのはなぜかと素朴な疑問を感じて調べ始めた。ターゲットを誰にするかという選択眼がすごい。