そんな彼も一昨年の秋に大きな挫折を味わう。文春はヌードを載せないのだが、その頃「春画展」に多くの若い女性が足を運んでいるという現象があり、新谷編集長はグラビアに春画を載せたのだ。
私も見たが、見開きに極彩色の春画が鮮やかで、なかなかの迫力であった。だがこれが社長の逆鱗に触れてしまい、文春の読者を裏切ったと3カ月の謹慎を申し渡されてしまう。
3カ月の謹慎で考えたこと
当時、彼は悩んでいた。スクープは出るが部数に結びつかない。そのために「話題だからやってみようか」くらいの軽い気持ちで掲載したのだが、裏目に出た。ビジネス情報誌『エルネオス』でインタビューした時、彼はこういった。
「社長から休養だっていわれた時には、選択肢は二つしかなくて、従うか、会社を辞めるかだと思いました。でも、辞めるというのは、やっぱり現場に対して無責任じゃないですか」
その3カ月、いろいろな人に会って、「なんか生前葬をやっているみたいな感じでした」。一緒に修羅場をくぐってきた編集部員やライターたちも新谷の復帰を心待ちにしてくれていた。その時の気持ちを彼は、「またこいつらと一緒にバッターボックスに入って、フルスイングできるのかと思ったら、やる気がみなぎって、そこへ絶好球が来たので思い切りバットを振った」と語ってくれた。
それが2016年最初の号の「ベッキーのゲス不倫」である。以来「美智子さまが雅子さまを叱った」「巨人軍の黒い霧 野球賭博元エース候補 笠原将生(25)の告白」「福原愛結婚へ」「錦織圭がのめり込む“奔放すぎる”恋人」「斎藤佑樹汚れたハンカチ」「レコード大賞を1億円で買った」と怒涛のスクープ連弾になる。
デジタルにも力を入れている。ニコニコ動画のドワンゴと「週刊文春デジタル」をやり、NTTドコモがやっている「dマガジン」では月の売り上げが2500万円を超えるという。画期的なのは、スクープコンテンツをテレビ局に1本いくらで売ることを始めた。
「私がやろうとしていることは『Web現代』で元木さんが試みられようとしていたことを、だいぶ遅れましたけど、今やっているんです。今起こっているのはコンテンツ革命というよりは流通革命で、コンテンツを読者に伝える流通経路がかなり多様化してきているので、それに対応できるかどうかだと思っています」