「革新」と「保守」を読み比べる意味
そのうえで「首相らの発言は不自然ではないか、との見方もあるが、事実なら、首相の友人を優遇したという批判は成り立つまい」「和泉氏ら首相官邸スタッフが各省庁に対し、規制改革を急ぐことを求めるのは理解できる。その際は、一部地域や業者を不当に特別扱いしたと取られぬよう、細心の注意を払う必要がある」と正論に思える主張を展開するから、読者は「そんなものか」と納得してしまうのである。
これまで10年以上にわたって新聞の社説を書いてきた沙鴎一歩が言いたいのは「朝日社説が優れ、読売社説が劣る」というわけではない。「革新と保守という両紙を読み比べて考えるべきだ」ということである。
安倍政権の「傲慢さ」が噴出している
それにしても社説はありきたりの論評ばかり。せっかく安倍首相が出席する閉会中審査が開かれたのだから掘り下げた論を展開してほしい。
その点、毎日新聞の朝刊(7月22日付)に掲載されたノンフィクション作家・柳田邦男氏のコラム「深呼吸」は、問題の本質をしっかりとらえていて勉強になる。
この柳田氏のコラムは「安倍政権の傲慢さ、噴出」との見出しを掲げて次のように書き出す。
「安倍政権の閣僚の暴言や曲解発言の問題点については、これまでもこの欄で継続的に書いてきた。だが、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の日報の廃棄などをめぐる稲田朋美防衛相の発言、学校法人『森友学園』に対する格安での国有地売却問題や、学校法人『加計学園』の獣医学部新設問題をめぐる安倍晋三首相や関係閣僚、官僚の発言は、安倍政権の内実と体質を“集大成”するように露呈した『3点セット』となった」
こう前書きしたうえで「なぜ、かくも重大な問題が同時多発的に顕在化したのか」と疑問を提示し、「そこには、単なる偶然ではなく、そうなる必然というべき要因があったと思う。それは、首相自身をはじめ、安倍政権を忠実に支える閣僚や、内閣官房をはじめとする官僚たちの、問題に対する姿勢や言葉そのものの中にある」と安倍政権の問題点を掘り下げていく。
不透明さ、印象操作、はぐらかし、人格攻撃
そして「特徴別に列挙すると、次のようになろう」と書く。
「(1)「記録文書はない」「文書は廃棄した」「記憶にない」と言って、事実を不透明にする。文書の探し方はおざなりで、批判されると調べ直して「ありました」と説明はするが、意味づけはあいまいにする」
「特に、法的に保存を義務づけられていない報告文、連絡文(加計学園問題における文部科学省の内部文書はその象徴)などは「備忘メモ」などと呼び、内容の信ぴょう性を否定する。事案の全体的経緯の中での意味づけこそが重要なのに、そういう検証は棚上げしてしまう」
「国会での官僚の答弁も、事実関係の解明を期待する国民を裏切るものばかりだった。森友学園への国有地売却をめぐり、答弁に立つ度に『記録がないので経過は分かりません』と、録音テープを再生するかのように全く同じ言葉を繰り返したのは、後に国税庁長官に栄転した財務省の佐川宣寿理財局長だ」
ここまで具体的に問題点が洗い出されていくと、どんな読者も理解しやすいだろう。