「アメリカの内外で非難されるトランプ大統領だから」と言ってしまえばそれまでだが、経済を専門に扱う日本の保守的大手新聞がここまで書くというのは、それほどトランプ政権が支持を失っている証しなのだ。

ロシアゲート疑惑で暴走し、何もせずに終わる

日経社説はその中盤でトランプ氏をこうも批判する。

「政権の発足の前後、トランプ氏の一挙手一投足は世界中の注目を集めた。ツイッターの発信が多い米国時間の早朝に画面を見守る役職を設けた国もあった」

「最近は読むに値する発信はあまりない。政権半年の節目に『米国製品を買おう』運動を展開したが、その程度のことで米製造業がよみがえるわけがない」

「『北米自由貿易協定(NAFTA)を破棄する』『中国を為替の不正操作国に認定する』『医療保険制度改革法(オバマケア)を廃止する』――。これらの主張はどこに行ったのか。公約で本当に実現したのは、環太平洋経済連携協定(TPP)と温暖化に関するパリ協定からの離脱くらいだ」

さらには「トランプ政権は何もせずに終わる」などと次のように厳しく指摘する。

「共和党主流派との折り合いが悪く、政策の推進力はほぼない。ロシアゲート疑惑に足を取られ、もはや暴走すらしないかもしれない。大統領任期はあと3年半あるが、何もせずに下降線をたどって終わるのではなかろうか」

日米は終戦以来、強い絆で結ばれてきた。その日本の新聞にここまで批判されるのだから、トランプ大統領がこの社説を読んだら愕然とするだろう。もし安倍晋三首相が新聞社説からこれだけ批判を受けたら、怒りのあまり卒倒することは間違いない。

日本は欧州やアジアとの連携を深めたい

後半で日経社説は「ギャラップ社の世論調査で16日時点の支持率は39%。6月に記録した37%よりましだが、上向く気配はない」と分析し、「もはやトランプ氏の顔色をうかがっても仕方がない」と言及する。

そして最後に「日本はどうすればよいのか。欧州やアジアの主要国との連携を深めることだ。国際秩序の漂流を少しでも食い止めるために」と書いて筆を置いている。

なるほど。アメリカ以外の多少力のある国々と仲良くすることを目指せというわけだ。そうすれば国際秩序が整うはず。これが日経社説の主張だ。

やはり前述した通り、日経新聞は、アメリカが世界の政治や経済から姿を消すと世界が無秩序になることをかなり心配しているのである。

米国第一主義は「偉大な米国」の復活に逆行する

次に東京新聞の社説を読み解いていこう。

東京社説は「小さくなる後ろ姿を見送る思いだ。トランプ政権が発足して20日で半年。国際舞台から米国の退場が続く。米国第1主義は、目標の『偉大な米国の復活』には逆行することを大統領は悟るべきだ」とリード(前文)を置く。日経社説同様、厳しい指摘である。

ちなみに東京社説は他紙と違い、きちんとリードと本文を分けて書いている。

東京社説はその中盤でキューバなどの中南米諸国とアメリカとの関係を云々する。

まず「トランプ氏は6月、オバマ前大統領の融和政策を見直し、制裁を再び強化する方針を打ち出した。(オバマ氏の融和政策によって)両国のヒト、モノ、カネの往来は急増し、観光業をはじめ米企業にも大きな商機をもたらした。トランプ氏はこの流れを逆戻りさせようとしている」と指摘する。