部下の評価に悩まない管理職はいない。一度「できない」とレッテルを貼られた社員を、どう再生するか。日本全国に約1万4000人いる銀行の支店長のなかには、人事評価でバツをつけられ気力を失った部下を次々と引き上げ、役員にまで送り出した人物がいる。元都銀マンで作家の黒木亮さんが、目の当たりにした「伝説の名支店長」4人に共通するリーダーの流儀を明かす――。
会社のミーティング
写真=iStock.com/b-bee
※写真はイメージです

頭取からの電話を無視する名物上司

かつて筆者が所属した都市銀行に長谷川さんという、必ず業績を上げる支店長がいた。この人は副頭取まで昇進したが、相当ユニークで、「一日支店長」という制度を自分で勝手につくって運用したりしていた。これは支店長と部下の行員が一日だけ仕事を入れ替わるというもので、たとえば長谷川氏が支店の営業フロアーの隅で一日金勘定ばかりをやる資金係を務め、本来の資金係の若い女性行員が、営業フロアーの扇の要の位置の大きな支店長席で、融資案件の決裁や営業マンの日報チェックなど、本当に支店長の仕事をやるというものだ。

たまに本店の頭取から電話がかかってくると、支店長席にすわった女性行員が慌てて受話器の送話口を手で押さえ、「しっ、支店長さーん、とっ、頭取からお電話が入ってますー!」と呼んだりするが、資金係の席の長谷川氏は「今日は、あなたが支店長なんだから、あなたが答えなさい」と返事をする。女子行員が困って「あっ、あのっ、頭取、今、支店長さんにお話ししたんですけど……支店長さんは、今日はわたしが支店長なので、わたしがお話しするようにと……」と必死になって説明をする。頭取は「はぁーん、なにいってるのかね⁉ 長谷川は、そこにいるんだろ? すぐに電話に出るようにいいなさい」と苛々した口調でいい、女性行員はすがるような眼差しで「あっ、あのっ、支店長さん、とっ、頭取が……」というと、長谷川氏は返事もせず、人差し指で彼女を指さす。あなたが答えなさいという意味である。かくして頭取は立腹して電話を切ってしまうが、長谷川氏は涼しい顔で、札や硬貨を数えたり、手元の出納用紙にボールペンで金額を記入したりしていたという。

長谷川氏がATM(現金自動預け払い機)の係を一日やったときは、一台一台ATMを磨きながら「あなたはよく仕事をしてくれるねえ。お神酒でもかけてあげようかねえ」と入出金量の多いATMに話しかけていたという。

【関連記事】
セブン‐イレブンの「最強ナンバー2」はなぜ社長になれなかったのか…鈴木敏文の"最後の弟子"が語った本音
「スキマ時間にメール返信する人」は仕事がデキない…キーエンスの営業部隊が組織的に実践する"時間ハック"
地方衰退の一番の原因は「人口減少」ではない…山口の超富裕層が「住民税43億円」をまるっと抱えて移住した理由
仕事のデキない人ほどこの髪形をしている…相手から全く信頼されない「ビジネスで一発アウト」ヘアスタイル3選
バフェットも「現金は危険だ」と警告した…オルカンでもS&P500でもない、インフレ時こそ強さを発揮する「資産」