「人種の亀裂を容認した」と批判
さらに読売社説は「政権内では、トランプ氏の長女夫妻が穏健派で、国際協調を重視する。軍人出身のケリー首席補佐官、マクマスター補佐官(国家安全保障担当)も現実主義者だ」と指摘する。
そのうえで「思想信条が異なるバノン氏が、安定した政権運営の障害となるのは自明だったのではないか」とバノン氏の解任を評価する。
そして「ホワイトハウス内の対立は収まっても、最大の懸念材料が残る。トランプ氏自身の資質である」と書く。この読売社説はトランプ氏への攻撃の手をまったく緩めない。
さらに「南部バージニア州の衝突事件で、『非は双方にある』と語った。人種差別に反対する活動家を、白人至上主義のKKKやネオナチなどの極右勢力と同列に並べた」と書き、「人種による亀裂を容認したと受け取られても仕方ない。与党の共和党や経済界も含めて、反発の声が広がったのは当然だろう」と付け加える。
さまざまな人種が集まっているのがアメリカという国である。そのアメリカで「人種の亀裂を容認した」という表現でトランプ氏を批判する。
最後に読売社説は「トランプ氏の家族と元軍人の勢力が政権内で影響力を持ち、外交や経済などの専門家が不足しているのは気がかりだ」として、「北朝鮮情勢が緊迫化する中、国務省などの高官ポストの空席を早急に埋めて、体制を強化せねばならない」と強調する。
その通りである。高官ポストの空席は、日本の安全に関わる大きな問題だろう。
日経社説は「トカゲのしっぽ切り」と指摘
8月22日付の日経新聞の社説も「米トランプ政権は混乱の収束に努めよ」との見出しを掲げ、こう書き出す。
「米トランプ政権が一段と混迷を深めている。大統領が白人至上主義を容認すると受け取られかねない発言をし、国民世論に大きな亀裂が入った。混乱の火種と目されてきたバノン首席戦略官を更迭したのを奇貨として、国論の収束に努めてもらいたい」
産経や読売の社説と趣旨は同じである。
トランプ氏に対してはこんな書き方である。
「トランプ大統領はバージニア州で起きた暴動に際して『双方に責任がある』と語り、白人至上主義の秘密組織クー・クラックス・クラン(KKK)の肩を持つかのような態度をとった。いかなる人種差別も許容されるべきではなく、米国の国内問題として看過するわけにはいかない」
「バノン氏はいなくなったが、トランプ氏本人が姿勢を改めたかどうかは判然としない。トカゲのしっぽ切りで終われば、政権への批判は収まるまい」
ここで日経社説は「トランプ氏はバノンというトカゲのしっぽを切っただけだ」と言いたいのだろう。
沙鴎一歩もそう考えるが、その意味でも今後のトランプ政権の動きをしっかり見ていく必要がある。