主張に突っ込みがたりない東京新聞の社説

東京新聞も山の日を社説のテーマにしている。東京はブロック紙、中日新聞の関東版だ。

東京の社説のリードで「パンダの誕生ほどには注目されていまい」と書き出し、「ほぼ同じころ、人工繁殖で生まれたニホンライチョウの赤ちゃんたちだ。絶滅の危機にあるこの鳥を知るほどに、人と自然との関係を問いたくなる」と「山の日」というよりも国の特別天然記念物で、絶滅危惧種でもあるライチョウの話を書いている。見出しも「『山の日』に思う ライチョウ、命の記憶」とある。

まず「種の保存のため環境省などが保護事業をスタート。昨年、一昨年と、乗鞍岳で卵を採取し、育った成鳥を同パークと長野県の大町山岳博物館、東京の上野動物園で飼育、今春から交配を試みた。そのひなが無事に誕生したのだ」と説明し、「ニホンライチョウの命のありようは、自然へのかかわり方が、ずさんになってきた私たちへの問いかけなのかもしれぬ」と訴える。東京新聞らしいといってしまえばそれまでなのだが、もう少し突っ込んだ主張がほしい。

32年前の世界最悪の航空事故

話を山の日から日航ジャンボ機墜落事故に変える。

実はこの沙鴎一歩は若いころ、運輸省(現・国土交通省)詰めの社会部記者として成田空港や羽田空港をカバーする航空担当記者だった。それだけに32年前の世界最悪の航空事故には思い入れがある。

ここであらためてあの事故は何だったのか、振り返ってみよう。

日航ジャンボ機は墜落の7年前の1978年6月、伊丹空港で尻もち事故を起こし、壊れた機体後部の圧力隔壁が修理された。製造元の米ボーイング社のチームが修理に当たった。しかしリベットの打ち方を誤り、隔壁の強度が不十分になっていた。

飛行を繰り返すうちに問題の後部圧力隔壁に金属疲労による亀裂が生じ、1985年8月12日、その亀裂が割け、そこから客室の空気が一気に噴き出して垂直尾翼やハイドロ(油圧駆動システム)などを次々と破壊し、操縦不能に陥った。機体は約30分間、ダッチロールを繰り返した後、群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」に墜落した。

これが520人という世界最悪の犠牲者を出した事故の経緯である。