「不登校」が増えている。文部科学省の調査(2023年度)によると、その数は小中学生あわせて34万6482人にのぼり、過去最多となった。なぜ「学校に行きたくない」のか。組織開発者の勅使川原真衣さんと、学校DE&Iコンサルタントの武田緑さんの対談の一部を、『「これくらいできないと困るのは君だよ」?』(東洋館出版社)より前後編でお届けする――。(前編/全2回)
階段でうずくまって泣いている小学生の女の子
写真=iStock.com/Hakase_
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「これくらいできないと困るのはきみだよ」

【武田】今回、「これくらいできないと」というテーマを聞いて一番に思い浮かんだのは「挨拶」でした。

挨拶は「だれでもできるでしょ」と思われがちです。

声を出すだけ、目を見て笑顔ではきはき言えばいいだけ。「『おはようございます』『さようなら』の一瞬くらい、元気に振る舞えるでしょう?」と。

でも実際は、それがとても緊張してドキドキしてしまうんだという子や、プレッシャーになってつらいという子もいるわけです。「これくらい」と思われていて、特にできやすさに差が大きいのが挨拶だと思います。

【勅使川原】なるほど。中高時代から、挨拶の声が小さいのと目を合わせたがらないことを先生にやんやん言われていた身なものでさっそく興味津々です。

その正しさに「正当性」はあるか

【武田】いま一緒に学校DE&I〔Diversity, Equity & Inclusion。多様性を前提に組織やコミュニティのあり方を見直し、差別や排除をなくしていくための視点〕を広める活動をしている仲間と、「学校の正しさカード」というものを作っています。今の学校で良きこととされているいろいろなこと、それこそ挨拶や服装、姿勢などの「正しさ」を一つひとつカードにしています。

「学校の正しさカード」とマトリクス
「学校の正しさカード」とマトリクス 出典=『「これくらいできないと困るのは君だよ」?』(東洋館出版社)

まだ開発中なのですが、「その正しさの“強固さ”」と「その正しさの“正当性”」という2軸で、マトリクスの上にカードを配置していってもらうというワークをしようかと考えています。

カードを裏返すと、その正しさ・“常識”を苦しいと感じている子どもの声が書かれています。それを踏まえて、「この正しさってどうなんだろう?」と立ち止まって考え、より暴力性の低くなる対応を考えてみよう、というものです。