「HSPだから」の問題点
【勅使川原】「お母さんから預かってきました」と言うのが難しくて渡せなくなるというと、最近はそれをハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)だから、みたいに言ったりもしますよね? ただ悩ましいのは「HSPなんです」と言った先だと思っていて、そのあたりはいかがですか?
【武田】そうですね、HSP概念にしても、発達障害にしても、基本的に困りごとの原因を個人に帰するベクトルで使われがちなのが気になってしまいます。「この子が特殊に、こういう性質だから仕方ないよね」みたいな。
【勅使川原】ですね。あたかも「配慮」「特別対応」「思いやり」かのようですが、そもそもベクトルが個人に向いている。それでは問題が個人化する一方ということですね。
「わがまま」なのか、「本当に無理」なのか
【武田】「こういう子だから特別に」に付きまとうものとして、「『本当に無理なのか』問題」というのがあると思っています。つまり、「頑張ったらできるのか、本当に無理なのか」とか「わがままやサボりではなく、本当に対応してあげないといけない案件なのか」という問いです。
【勅使川原】ナッツアレルギーなのか、ただの好き嫌いなのか。
【武田】そうそう。アレルギーは医学的に診断できるからまだわかりやすいですけれども。児童精神科医の吉川徹さんが、「『できる』と『できない』の間には、『できるけど疲れる』ことがたくさんある」とおっしゃっていて。白黒つくわけじゃなくて、グラデーションなんですよね。
【勅使川原】いいこと言う。本当にそうですね。



