子どものスマホ依存を改善するにはどうすればいいのか。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「スマホを取り上げたり、使用を制限したりするのは逆効果。大切なのは、子どもが自ら『勉強したい』と思えるきっかけをつくることだ」という――。(第2回)

※本稿は、高橋暁子『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

スマホでゲームをする子供
写真=iStock.com/Miljan Živković
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スマホを取り上げたらキレて暴れた中学生

ここでは、実際に生徒・学生がスマホとどのように付き合ってきたか、具体的な対処法について解説していきます。その前に、大前提としてお断りしておきたいのが、スマホ・ゲームを取り上げたからといって、勉強や受験勉強などをするとは限らないということです。

考えれば当たり前のことですが、受験生ではない保護者の皆さんがスマホやゲームを捨てたからといって、受験勉強をするようになりますか?昇給などに役立つ資格試験ならともかく、する必要もないのにわざわざ大変な受験勉強をするわけありませんよね。

子ども達も同じです。「志望校に合格したい」「次のテストではもっと順位を上げたい」など、勉強に対するモチベーションがなかったら、単にスマホやゲームを失っただけで終わってしまうのは当たり前です。

そもそも「取り上げる」と保護者主体となっている時点で間違っているのです。以前、スマホゲーム依存となっている中学生の保護者から、「スマホを取り上げたのに、思ったように勉強してくれなかった。それどころか取り上げたことにキレて暴れて大変だった」という相談を受けたことがあります。

詳しく聞いてみると、やる気以前に学校の授業についていけない状態が長引き、だんだん勉強そのものが嫌いになって、スマホやゲームに逃避していたということがわかりました。

我が子がスマホゲームに依存した本当の原因

この生徒は小学生時代、勉強が得意なタイプでした。努力の甲斐あって中学受験では志望校に合格しています。ただ、親のすすめで受験したため、その学校に入りたいとか、通いたいという主体的な気持ちはありませんでした。

生徒が進学した進学校は高校2年生までに大学受験に必要なすべての学習内容を学び終えて、高校3年生は大学受験のための勉強に集中できるように学習進度が速いことで知られています。それ故、気を緩めたら授業についていけなくなってしまう生徒も少なくはありません。

学業不振になった生徒も受験勉強から解放された気の緩みから勉強をサボりがちになった結果、授業についていけなくなっていました。小学生までは勉強につまずくことがなかっただけに、効果的な勉強法を知らずに、どうしたらよいかわからなくなった生徒が逃避先として選んだのがスマホゲームだったというわけです。

つまり、本当の問題はスマホゲームではなく、生徒の学習内容に対する理解と学習に対するやる気だったのです。『スマホで受験に失敗する子どもたち』の中では、スマホやゲームは、学業不振や人間関係トラブル、家庭内不和などの逃避先になることが多いとご説明しました。このような例は、決して珍しいことではないのです。