「取り上げ」や「制限」の前に親がやること
この生徒の場合、まず、つまずいたところから復習し、理解できるようにして、勉強への抵抗感を除いてやる必要があります。自分の好きなことややりたいことについて考えさせ、改めて学習する意味を考えさせる必要もあるでしょう。
自分がスマホゲームを逃避先にしてしまっていること、その時間を減らして自分の生活を取り戻す必要があることが理解できれば、徐々に日常生活を取り戻していけるはずです。根本的な理由を理解せず、スマホやゲームを取り上げたり制限したりしても、何の効果もなかったのです。
本書では様々な制限する方法をご紹介してはいますが、実はどれも完璧な方法というわけではありません。ここでは深くご紹介しませんが、ほとんどのものには、バグ的な抜け道や制限突破の方法があります。そのような方法を公開している場も、たくさんあります。少し調べる力があれば、方法を見つけ出して制限を解除するのは、それほど難しいことではないでしょう。「既に抜け道を知っている」という方もいるかもしれませんね。
しかし、抜け道があったらその方法は無意味というわけではありません。それを使えばやはり制限しやすくなるし、長時間利用になりづらいだけでも効果があります。
子ども自身が「自分のため」だと思えるか
素直なお子さんなら黙って制限されているかもしれませんが、反骨心があり、リテラシーや検索スキルなどが高いお子さんの場合は、抜け道を見つけ出してしまうかもしれません。そのようなタイプのお子さんであればより一層、制限する意味を理解し、それが自分に利することを理解し、自ら協力して制限したいと思わなければ意味はないでしょう。
そして前提として、子ども自身に「学習内容を理解したい」「成績を上げたい」という強い気持ちや、「志望校に受かりたい」という強い願いがあることも大切です。子ども自身が、「悪い成績でも気にしない」「高校や大学への進学に興味がない」のであれば、悪い成績をとっても失敗ではないので、このやり方が成り立たないかもしれません。
子どもが、学習内容を理解したい、成績を上げたい、志望校に受かりたいと思っていること。スマホ、ゲームやSNSの利用時間が長いことで支障が出ることがわかっており、利用時間は短くすべきであり、自分のためになると考えていること。それが、制限が効果を発揮するためのほぼ唯一絶対の条件なのです。
以前講演会で、「子どもがスマホ、ゲームやSNSを制限したい気持ちにならなかったらどうすればいいですか」と、ある保護者から聞かれたことがあります。「制限機能をかけていたのに、いつの間にか破られていました。どうすればいいでしょうか」という相談も、何度も受けています。皆さんは、どう思われますか?

