進路選びに親はどうかかわるべきか。スクールカウンセラーとして3万人の親子に寄り添ってきた普川くみ子さんの著書『10代の子どもの心の守りかた』(実務教育出版)より、最善の進路を選ぶための親の関わり方を紹介する――。
面談する親子
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それは本当に「自分の意思」だったのか

習いごとを選ぶとき、親が「この習いごと、やってみたら?」と言えば、子どもはそのまま従うことも多いでしょう。

10代半ばより幼い年齢の子どもは、親の意見をそのまま受け入れ、「うん、やってみる」と答えることが少なくありません。

親はそんな様子を見て、「子どもが自分で決めた」と、都合よく解釈しがちです。しかし、その選択は本当に「自分で決めた」と言えるでしょうか。

たしかに、最終的に「やる」と決めたのは子ども本人です。表面的には、子どもが自分の意思で判断したように見えるかもしれません。しかし、その背景には「この習いごとをしてほしい」という親の願いや意図が、うっすらと透けて見えていないでしょうか。

子どもは親の気持ちを汲み取って、「親を安心させたい」「親をがっかりさせたくない」という思いから、親の望む選択をしてしまうことがあります。

これは聞いた話ですが、ある日、小学生の女の子が「ピアノを習ってみようかな」と言いました。「ピアノを習いたかったけれど、できなかった」という話を何度かしていた母親は最初、娘が自分と同じ興味を持ったことに喜びました。

女の子はしばらくレッスンを受けましたが数カ月後、「ピアノをやめたい」と打ち明けてきました。理由を聞いてみると「お母さんが喜ぶかなと思ってやってみたけど、あまり楽しいと思えなかった」とのこと。

母親はずっと娘にピアノを習わせたかったあまり、娘の気持ちを確認していませんでした。つまり、娘の行動は自分のためではなく、親のための選択だったのです。