思春期の子どもと良い関係を築くには何が大切か。スクールカウンセラーとして3万人の親子に寄り添ってきた普川くみ子さんの著書『10代の子どもの心の守りかた』(実務教育出版)より、子どもから悩み相談をされたときの対処法を紹介する――。
母のアドバイスがトラブルを悪化させたケース
たとえば、子どもが「この前、友達にこんな(嫌な)ことを言われた」と話してくれたとします。そんなとき、「友達にこんなふうに言ってみたら?」などと、求められてもいないアドバイスをしていませんか。
親が具体的なアドバイスをすれば、素直な子どもの場合、その通りに行動します。その結果、関係が改善すれば問題ありませんが、うまくいかなかった場合、子どもの鬱屈した気持ちの矛先は、アドバイスをした親に向けられることがあります。
あるお母さんから伺ったお話です。
ある日、学校から帰宅した高校生の娘が「友達に(自分の容姿について)こんなことを言われた」と話してきたそうです。娘はとても傷ついていた様子だったため、お母さんは思わず「そんなことを言うなんてひどいじゃない、あなたも言い返してみたら?」と伝えました。
翌日、娘はお母さんの言う通りにして友だちに反論しましたが、「別に本気で言ったわけじゃないよ」と返され、その後、彼女とは疎遠になってしまいました。
娘は後で「お母さんが言った通りにしたけど、うまくいかなかった」と愚痴をこぼし、お母さんは「よかれと思ってしたアドバイスが、トラブルを広げてしまった」と後悔していました。
このように、子どもは、「親の言う通りにしたから、こんなことになった」と不満を抱き、親子関係が悪化してしまうこともあるのです。


