日本の小学校は“世界の中でも優れている”と言われるが、本当なのか。実業家の堀江貴文さんは「子どもを預けて安心できる場所としてはベストだが、それだけだ。勉強するだけなら、塾にも学校にも通う必要性はほとんどない」という――。(第2回)

※本稿は、堀江貴文、岩崎ひとみ『小学ゼロ年生 7歳からの進路相談』(小学館集英社プロダクション)の一部を再編集したものです。

“頭が柔らかい子”を育てるにはAIが有効

「頭が柔らかい」人を育てる教育に頼れるのは、AIだ。子どもは、顔や身長が違うように、勉強の理解度や弱点にはバラつきがある。学習能力の個性を、画一的に平均化せず、どのように伸ばしていくのか? という問題は、教育界の長年の課題だった。

パソコンを使用して授業を受ける小学生
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教員を増やして対応するのは、すでに限界に達している。解決策として、教育現場ではAI教師の導入が試みられている。教える相手がAIなら、子どもが間違えたテスト問題や、解答にかかった時間、学習履歴や得意な分野をデータで分析して、それぞれの個性に合わせた学習指導を行える。AIをかけ合わせた個別最適化学習が、これからの学びには必要だ。

教え方の上手い家庭教師や、教育コンシェルジュのように、子どもごとに学びを効率化して提供するAI機能は、アダプティブラーニング(適応型学習)と呼ばれる。これが教育現場に採り入れられることで、教師不足も学習不足も、大幅に解消されるはずだ。

アダプティブラーニングは、学ぶ力の最大化にとどまらない。成績優秀な子どもの行動特性から、高い能力を裏づける要素を分析・抽出し、他の子どもへの指導に活用するなど、教育レベル全体の底上げに役立つだろう。

AI教師は“好きなだけ学ばせてくれる”

語学学習では、ディープラーニング(深層学習)の技術を応用したAI教師の方が、人間の先生より優れているかもしれない。何よりAI教師は、何時間でも疲れないし、機嫌が悪かったり、怒鳴ったりしない。教え方にムラがある先生のせいで、英語嫌いになってしまうような悲劇は避けられるのだ。

テストの採点の自動化、データ分析をもとにした指導内容の改善、学校の低コスト化など、多くの意味でもAI教師の導入は利点がとても多い。

AIが相手なら失敗も、繰り返しの質問も厭わない。いつでも好きなときに、好きなだけ学ばせてくれるAI教師は、「頭が柔らかい」子どもたちの粘り強い学習意欲に、すべて応じてくれると考える。

普通の小学校でも、校舎にいる人間の先生は校長と数人ぐらいに減り、タブレットのAI教師が恩師になるという時代は、遠くないかもしれない。AI教師なら、いまある教育現場の問題を解決してくれるとまでは言わない。AIを管理するエンジニアの手配とか、そもそも基本の知識が教育現場に足りないとか、課題は多々ある。

しかし、子どもたちの個性に応じた教育の実践において、AIが最適な協力者になりうるのはたしかだ。AIとしっかり組むことで、「人の学びとは何か?」という哲学的な議論が深まるきっかけにもなるだろう。